JR東日本・カシオペア−カシオペアツイン(個室寝台)

……E26系客車を使用

 88年にデビューした北斗星の人気は暫く続いたため、ブラッシュアップし、99年にデビューしました。JRになっての初の、新形式の客車や、2階建てステンレス客車で、全寝台がトイレの付いたA寝台個室という構成も、珍しい存在です。





 個室全体をイラストで示したものです。L字になっています。このイラストでは、可動式肘掛け、トイレのドアを省いています。


寸法

 線路方向枕木方面天井高さ
客室2,7101,9851,800
ベッド7951,985--
テーブル395416--
※ただし、個室の形状がL字になっているため、上記の数字で床面積などは求められません。また、地下階の寸法で、車体が大きく湾曲しているため、場所によってはこの数値から大きくずれます。


 通路から見た、個室のドアの写真です。階段は2部屋で共用します。廊下はほぼすべてが木目となっていて、24系客車とは大違いです。北斗星のロイヤルのドアは、カードキータイプか本物の鍵が渡されましたが、この個室のドアは、サンライズと同じ暗証番号式です。暗証番号のドアは縦並びになっていますが、ドアを開けると、開いた側のボタンが点灯するので、間違える可能性は低いでしょう。
 ちなみに、デッキから通路に入る際は「ここにふれるとドアが開きます。」という位置に手をかざします。ドアの枠の、横にセンサーがあるのでしょう。一方デッキに向かうときと、号車間の移動は真上のセンサーに反応させるわけで、ちょっと戸惑います。



 列車に乗車し、客室に入ると、ソファの状態でセットされています。今時の寝台列車は、ベッドモードがデフォルトの中、珍しいです(ベッドの状態だと狭いからでしょう)。窓が、北海道内では、ちょうど海が見える向きになっています。
 出発すると、今までの客車は衝撃がありましたが(それはそれで嫌いではないですが…)、非常にスムーズで、動いたことを感じさせないほどです(運転士によるかもしれません)。
 照明は4カ所あります。一番大きな蛍光灯の室内灯(明暗の調節もできる)、ドア付近にある足下灯、読書灯が2カ所です。この読書灯は、角度は変えられませんが、ソファ状にして座ったときにちょうどいいようになっていると思います。読書灯スイッチは、窓枠の真下周辺にあります。



 テーブルは、揺れで落ちないように、ゴムで縁取りがなされています。また、板そのものも、多少粘着度の高い素材のようで、持参したコンピューターのゴム足が軽くくっついてしまうほどです。機能重視ですが、板そのものの薄さもあり、少々安っぽく感じはします。
 そのテーブルには、案内のA4用紙が置かれていて、BS放送のテレビ番組表のコピーも挟まれています。大昔と違い、ベッドメイキングは各自でやらないといけないため、その説明書きが図入りで記してあります。
 写真右側には、上から順に、鏡、ディスプレイ、コントロールパネル、ゴミ入れがあります。コントロールパネルにある「送風(夏期:冷風・冬季:温風)」の吹き出し口は、L字の角の天井部分に(写真左上付近)、「暖房」の吹き出し口は、L字の角の下(ベッドメイキングなどでも動かさないところ)にあります。時計にはアラーム機能があります。
 ディスプレイで地図を表示させながら音楽を聴くことはできません。BGMなどBS放送以外にしていると、ディスプレイには現在停車中や次に停車する駅名が表示されます(もちろん電源を切ることも可能)。
 この列車は全寝台が個室で、車内販売が来たかどうか、分かりづらいです。そのため、表示があります。ピピピという音とともに、コントロールパネルに「車内販売員がまいりました」と表示されました。ちなみに、氷をもらいたかったところ、食堂車で無料でもらうことができるようです。



 上の方にあるイラストの実車のアングルです。現実のカメラで再現するには、魚眼レンズでどうにか出来るかどうか…。



 イラストでは略したハンガーがあります。ハンガーの右下には棚があり、切り欠きがありますが、ハンガーを掛けた上着と、ベッドにしたときに使わなくなる“可動式肘掛け”を収納するときに、ちょうどよい寸法になっています。



 ベッドモードにした状態を、イラストで示したものです。テーブルを折り畳み、ソファー状にしている座席を引っ張り出すと、このようなツインベッドになります。



 ベッドモードにすると、荷物の置き場をどうしようか気になるほど、狭いです。そしてふと気になることが。寝る向きはどうするのだろうか、ということです。一人なら好き勝手にできますが、二人の場合、L字の角の部分に…
  (1)二人の足があるように寝る→無難?
  (2)片方が頭で片方が足→蹴られそうです。
  (3)二人とも頭→いびきがある人なら災難です。
 (1)だと、片方の人が起きあがるとき、棚に頭をぶつけないかが気になりましたが、実際にやってみたところ問題はありませんでした。考えているときにちょうど車掌の検札があったので聞いてみると、特に決まりはないものの、進行方向で決めるのも一手とのことでした。
 この列車のスイートや、クルーズトレインに特化した寝台列車はおそらく、鉄道車両としての寸法の限界はあるものの、かなり余裕のある設計が出来ると思いますが、「2人利用」「個室内で立てる」「トイレや洗面台を用意」という、恐らく設計前に決めた仕様で極限まで切りつめ、かつ「一車両当たりの定員を出来るだけ増やす」を実現したのが、このツイン個室ではないかと思います。個室は広くはないものの(広くないからこそ)、棚の切り欠き等、色々な工夫があり、非常に興味深かったです。




 トイレ部分です。洗面器だけ折り畳まれていて、使うときに床屋さんの洗髪台のように、引き出します。鏡の左下にある円柱のノブは、水温調整のサーモスタットです。紙巻器の右斜め上にあるパネルは、トイレの洗浄ボタンや、洗浄の状態(洗浄中/故障)を示しています。
 客車としては新しい方とはいえ、できてから2015年現在で十数年経ちますが、この個室が出来た当時はあまり電源の需要がなかったからなのか、個室全体の電源は、鏡の右にある「カミソリ用」しかありません。一カ所だけなので、2人で使う際は、二股ソケットではなく、延長コード(いわゆるたこ足配線の)を持参した方がいいでしょう。
 鏡の中は収納棚になっていて、歯ブラシ、コップ、固形石けんが入っています。
 シャワーはありません。編成内にあるシャワーを使う必要がありますが、全員が使えるようなキャパシティはありません。そのためか、カシオペアツアー(上野〜札幌間の運行ではなく、チャーター便)では、途中、温泉地に寄る旅程を組んでいます。



 始発駅を出発してしばらくすると、ウェルカムドリンクのサービスがあります。ウーロン茶/オレンジジュース/温かいお茶が選択できます。このときに、食事を予約しているとその確認や、モーニングコーヒーのチケットが配られます(スイートなどと違い、各自取りに行く必要があります)。



 一人で使う際のサンプルです。もちろん進行方向にもよりますが、枕木方面に寝て、普段は線路よりのベッドを起こしてソファにしておくとちょうどよいのではないかと思います。シャワーの有無とサービス的なものは別として一人で使う分には、北斗星のロイヤルより、カシオペアのツインの方が、過ごしやすいかもしれません。選べる余裕はありませんが、個室番号が(全号車共通)、上りは奇数、下りは偶数の方が、向き的にはよいでしょう。


 これらの室内写真の車両番号:スロネE27-1
 取材時期:2015年04月



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