日本航空・BOEING747-400(JALファーストクラス スカイスリーパー)

 BOEING747(B747)は、40年以上、一時期はJALといえばこの機種、この機種と言えばJALというくらい、世界中を飛び回る機種です。
 その中で、BOEING747-400(B747-400)は、空気抵抗を抑えるために主翼の端にウィングレットが付き、従来の3人から航空機関士(フライトエンジニア)なしの2人で操縦できるようになるなど、今までのB747から進化した飛行機として、1990年にデビューしました。現在の塗装になる前までは、「スカイクルーザー」という愛称がありました。
 今となっては、エンジンが4つある飛行機は効率が悪い為に間もなく引退という話があったり、成田〜ニューヨーク線などの花形路線には、BOEING777-300ERなどの機種に世代を交代しつつありますが、現在でも、ハワイ線など(パックツアーなどの観光客が多く、エコノミークラスの割合が多い)路線ではなくてはならない機種です。…と書いたところで…

 この枠内は、B747の客室や座席の紹介とは、大きく離れる内容です。

 JALの、2010年4月28日のプレスリリースによると、今回搭乗した便(JO072/JO071)の機材がB767-300ERに、そしてBOEING747-400そのものが2010年度中に引退する旨の発表がありました。
 B767-300ERになるということは、確実にC,Yの2クラスになるでしょう(まさか、今更ファーストクラスを設けるとは考えづらいです)。そのエグゼクティブ(C)クラスは、私は乗ったことがありませんが、他機種の同Cクラスと比べ座席が狭く(*1,*2)、評判がよろしくないようです。また、BOEING747-400特有の広い機内が失われることになります。そうせざるを得ない程逼迫し、効率優先にしなければならない事情は分かりますが、この機材(B767)になった結果、マイレージとは関心が低い利用客が敬遠し、悪循環に陥らないかが心配です。利用者が少ないために、単純に小さい飛行機で定員を減らせば、搭乗率が上がり、効率が良くなるとは限りません。
 JALの収益を上げるには、客単価を上げなければなりません。となると、上級クラスを充実させる必要がある(*3)と思いますが、これでは、逆効果になるのではないか、とも思います。
 
*1
現在、ホノルル線のCクラスは、「スカイラックスシート」という名前の座席で、一方B767も、同じ「スカイラックスシート」が用意されるものと思われます。機能や姿はほとんど同じですが、機材により、座席の細かな仕様は異なります。詳細は*2へ。
*2
表内の“配列”とは、横のことを指します。シートピッチなどの縦は考慮しません。
機種Yクラス配列Cクラス配列Cの占有幅
B747-4003-4-32-3-2Y×1.43
B777-300ER3-3-32-3-2Y×1.29
B767-300ER2-3-22-2-2Y×1.17
B737-8003-32-2Y×1.5
この表をかみ砕きます。エコノミー(Y)クラスは、機種毎に座席幅に大きな違いはないものとします。Yクラスの座席幅を40cmとしてみます。また、通路の幅も違うと思いますが考慮しません。
B747の場合は10列なので、通路を除いて合計400cmです。これをCクラスの7列で割ると、Cクラスの幅は57.14cmになります。つまり、Yクラスの1.4倍強です。
B767の場合は7列なので、通路を除いて合計280cmです。これをCクラスの6列で割ると、Cクラスの幅は46.67cm(実際は46cm)になります。つまり、Yクラスの1.2倍弱にしかなりません。

ちなみに、もっとかみ砕いて、クラスJと比較すると…
B747の、Y:3-4-3配列に対して、クラスJ:2-4-2配列、Cクラスは2-3-2配列(CとクラスJはBコンパートメント)。
B767の、Y:2-3-2配列に対して、クラスJ:2-2-2配列、Cクラスも2-2-2配列。

そのため、全日空などの一部のB767はCクラスを2-1-2配列とし、この例に当てはめればCクラスの幅は56cmになり、B747とほぼ同等になります。しかし、今のJALに、2-1-2配列の座席に改造するほどの余裕はないものと考えるのが筋です。となると、今までB747だった路線がB767にダウンサイジングしてしまう路線のCクラス利用者からは、敬遠されることが十分考えられます。JR東日本の在来線特急のグリーン車と似たようなものです。
ホノルル線は、客単価が安いから、それでもいいのでしょうか。
*3
ほぼフラットに倒せるシンガポール航空のA380の上級クラスは、マイレージの特典航空券などではなかなか取れない=普通に運賃を払わないと席が取れないとのことです。これは、座席のクオリティが高いからこそ許されるものです。正直なところの改悪となれば、結局は安くしないと人が集まらないのではないか、と思います。
 個人的にB747好きとしては、単純に「残念」で終わるかもしれません。私もB747好きなので、「もうちょっと長く(あと5〜6年は)飛ばせられないのか」という要望です。しかし一方、座席の寸法を計測し、サービスをチェックする者としてみると、「本当に廃止していいのか」と問いたくなります。経営が改善されたところで、B747を戻すことはまずないでしょうし、B747-8などの次世代B747を導入する可能性も低いでしょう。そもそも、B747を手放すことが、本当に改善策なのでしょうか。B747を目の敵にして、誰かに対してのご機嫌取りのために退役させるのでしょうか。B747が好きな人は多いと思いますが、他社に移る可能性もあり得ます。単純に効率だけで解決できるものではありません。
 本当に2010年度中の引退の場合、日本でB747を所有する民間航空会社は、全日空グループのみとなりますが、そうなると、現在JALが整備している政府専用機は全日空に移るのでしょうか。
 2010年09月末を持って、このファーストクラス機材は、定期便上では飛ばなくなり、翌11年02月に引退しました。



詳細はアイコンの説明をご覧ください


 翼の端にウィングレットがあります。


 一番前に、12名のみのファーストクラスです(今となってはこの人数も多い方です)。三角の部分なので、中央の部分は余剰スペースとなり、広々しています。比較的新しい座席(SKY SLEEPER SOLO)は、この余剰部分にも座席を置き、一人当たりの専有面積を広く取っているようです。



 デザインや肘掛けの形状から、B747-400Dスーパーシートのファーストクラス版です。
 最近の新しいファーストクラスのように、個を重視したものではないため、中央の肘掛けや、物を置くことには、特に気を配ったものではありませんが、それ以外は、全体的に余裕があり、安定感があります。
 MAGIC(テレビや音楽など)のコントローラー設置の都合で、真ん中の肘掛け部分は、デビュー当初からのものとは変わっています。



 座席は、リクライニング、レッグレストともに電動式です。ランバーサポートは ありませんが、クッションを借りればよいでしょう。
 テーブルは、大きなサイズの一枚物です。テレビの前には、小さくカクテルトレイがあります。
 レッグレストを上げる際は、水平になると同時に多少伸びます。前のポケットのものを取り出すとき、前屈みになると、レッグレストのスイッチに触れてしまい、(意図せずに)レッグレストが前に出てしまうかもしれません(もちろん、体格などにも寄りますが)。



 クルーによっては、ヘッドホンが既にポケットに入っていたりすることもあります。このポケットは伸縮性がないため、このポケットも含めて、正直なところ、機内で使うものの収納にはあまり気を配られていません。上の荷棚に入れるほどでもなく、ちょっと置いておきたいというようなときには、床に置くしかないかもしれません。



 これより前にはドアがないAコンパートメントです。フライト中はもちろん、どんなに出発時刻ギリギリで搭乗しても、ファーストクラスの利用客と乗務員以外はこの部分を通ることは出来ないので、静かで落ち着いています。どんなに新しい座席を搭載した新しい機種でも、こうはいきません。ファーストクラスの為の客室形状と言っても大袈裟ではありません。
 ハワイで撮影したものですが、日射しが強いハワイのため、空調を強くしなくても済むように、機内が暑くならないように、右側の窓を閉めています。国内線でも、夏の間は、窓を閉めるというアナウンスがありましたが、ハワイは「常夏」と言われる場所のため、おそらく一年中閉めているのでしょう。


 <トイレ>

 ファーストクラス専用のトイレです。若干広いです。
 機内左側に2箇所ありますが、Aコンパートメント客室に近い方には窓があります。鍵を掛けて、スイッチを押すことでこのスモークが取れます。大理石のカウンター、三面鏡、窓の上の照明も、ファーストクラスらしく、一般的なトイレとは大違いです。B777の新しい機種も、カウンターは大理石模様ですが、それらと比べても上品です。
 ちなみにこの写真は、離陸して暫くしてから撮影したものです。その間に、トイレを使う人がいましたが、この通り、シンク内など含めて水滴がなく、搭乗開始直後のようにきれいです。もちろん、撮影以外にも普通にトイレを利用した時、入ると都度、必ずきれいになっていました(私自身も、撮影前に軽く掃除することもありますが、ここまできれいには出来ません)。1時間毎などではなく、利用の都度、掃除をしているようで、ここまで気を遣うとは恐れ入りました。トイレ内には、姿見の鏡や、着替える際の靴を脱いだときの台もあります。


 <ギャレー>

 利用客のリクエストに最大限応えるために、色々な食材を搭載しているため、かなり広いギャレーです。電子レンジはもちろん、エスプレッソマシンもあります。御飯は、保温ジャーが搭載されています(ハワイ線では機内では炊きません)。


 これらの写真の機材番号:JA8077




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