JR東日本・E259系

……成田エクスプレス号 のグリーン席


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 E259系とは、2代目成田エクスプレスの専用車両です。今まで、グリーン車には、1-1配列と、2-1配列と1-1配列が交互に並ぶ2-1配列の座席と、少なからず普通席とは差別化されていましたが、この形式では普通席と同一化されました。
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 JR東日本は長年、「普通車ですか?いいえ、グリーン車です」と感想を持たれるグリーン車を増産していますが、このE259系は、ますます普通席化に拍車を掛けたグリーン席です。これでも、背面ポケットの案内にはFirstClassと書かれ、日本の玄関口である成田空港から出発する列車の、上級クラスがこの様で、恥さらしもいいところです。「Premium Economy」程度が身分相応な名称ではないでしょうか。
 先頭車ではあるものの、一両丸ごとグリーン車ですが、客室は縦7列です。同じ在来線特急車両のグリーン車でも、E351系で縦13列ある車両もありますから、実質半分程度=半室グリーン車のような狭さです。乗務員室、多目的室、トイレ、(水栓と冷蔵庫を完備した)車販準備室のためにスペースをふんだんに使った結果、グリーン車が狭くなったと考えていいでしょう。



 狭いの一言につきます。肘掛けの幅は、この座席のページを掲載した時点で、ワースト1に入っています。まぁ、狭い座席は他にもありますが、新車に置き換わっており、その際には大きくなっています。この場合は、新車になったら狭くなった、というパターンです。
 まずは、窓側の席に普通に座るだけで、足が窓の下のダクト(写真銀色の部分)に当たります。ここ最近の新車にはダクトそのものがない車両もあるはずですが、これは、座席そのものの寸法を確保するためにぎりぎりまで座席を壁に寄せたため、足下が壁に寄らざるを得ない為でもあります。2-2配列は、どんなに座席が広かったとしても、こう言うところで割を食らうわけです。
 窓側の人が、窓よりの肘掛けに肘をかけると、窓枠に当たり、肘が肘掛けに十分に載せきれません。座席と壁の間が狭いためですが、もし、その間にものを落としたら、拾いづらく、見つけづらいでしょう。
 枕の高さが変えられます。E2系を見ると、枕が下にずり下がっている光景を見かけますが、これは固定するようにできていないからです。この座席はそれは解消されていて、大きな縦揺れがなければ、クリック感というか、勝手にずり落ちるようなことはなさそうです。枕そのものは、厚みがあり、やや柔らかめです。
 座席全体で、曲線を利用して、狭さを何とかごまかしています。中央の肘掛けの形状(先端が細く奥の方が太い)は、普通席で見られる形状でもあります。ただし、肘掛けを跳ね上げて二人分と言うことはできません。
 埼京線に、E233系が導入されるとのことですが、座幅は460ミリとのこと。この座席と比べると…5ミリしか差がありません。普通列車と比較してもこの有様です。



 その一方、シートバックが無駄に分厚いです。この分を薄くして足下の空間を広くしても良いのではないかと言うくらい…しかし、薄くすると、普通席と本当に同じに見えてしまう…つまり、快適性は二の次で、見せかけの為だけに分厚くしているのでしょう。とは言ってもそもそも、2-2配列にした時点で、快適性のことは考慮していないわけですが。
 肘掛け周りは、プラスチックの一体成型で、見た目、触感の柔らかさもありません。
 テーブルは、手前に引くことで、前後の位置が調整できます(グリーン席のみ)。しかし、元々が貧弱だからか、てこの原理で、下に重心を掛けると、テーブルと座席の支点がボキッと折れてしまいそうです。
 窓側席に座り、自席だけリクライニングを最大に倒し、フットレストに足を乗せると、狭さがよく分かります。隣の席のバックレストと、窓枠に囲まれて、窮屈でした。一方で、オリジナルポジションで座ると、窓側の足がダクトに当たります。位置が定まらない、どっちつかずなストレスのたまるシートです。これで追加料金が1500円です。神経がかなり図太い会社でないと、客から追加料金なんて取れません。



 こちらは、正真正銘の普通席の座席です。
 上の座席からテカりをとって痩せたらこんな感じ、というくらい、差がありません。グリーン席と普通席の差、ではなく、九州新幹線800系のように、座席の柄がバラエティに富んでいる、と言う方が違和感は感じないでしょうか。
 普通席とグリーン席の違いは、ミリ単位で寸法は違うと思いますが(一方で、通路の幅など何処かで割を食っているはずですが)、革かそうでないかのみです。革張りの方が高級感があるという判断のようです。確かにJR北海道の座席は、グリーン席のみ革張りですが、それはグリーン席の座席が大きいからこそ。885系は全座席が革張り、九州新幹線800系は自由席だけ革張りを使っている状態の中、高付加価値化、追加料金を取れる理由にはなりません。
 <普通席と比べて大きく違うところ>
・座席が革張り/布張り
・フットレスト(フットバー)の有無
・床が絨毯/ビニール
 この3点です。他は誤差の範囲程度に思う方が分かりやすいでしょう。ドリンクサービスはもちろん、別途契約が必要な無線インターネットがグリーン車なら無料とか、コンセントが使いやすいところにあるなどの差別化も一切ありません。



 背面ポケットは、ポケットと言うより、E3系などでおなじみのひもが、革で覆われた板に変わった程度です。また、これは経年劣化すればまともになるでしょうが、そのバネの圧力が強いです。ポケットに入っている「成田エクスプレスのご案内」と「車内販売メニュー」を出し入れするには問題ありませんが、乗客の持参した雑誌などを一時的に仕舞うのは、ちょっと握力の弱い人には難しいかもしれません。ポケットの横にはカップホルダーがあり、飲み物に関してはポケットに入れなくても済みます。
 ポケット内に入っている案内には「フットレスト」とありますが、実際はフットバーです。跳ね上げ式で、グレードの高い普通席に備わっているものと同程度の装備です。同じ首都圏〜成田空港を結ぶ、普通席の京成AE100系(先代スカイライナー・現シティライナー)の方が質が高いです。(本当の)フットレストは、靴のままでいい面なのか、本来は靴NGの面でも前の人がどうやって使ったか分からないなどと、使わない人もいるとはいえ、普通席レベルの装備を用意するというのは、客をバカにしすぎです。



 もし予約システムに隣席ブロックがあり、一人で座る分には隣に必ず誰も座らない設定があるとしても、座席そのもののが狭いので、窮屈さは解消されません。これがもし満席で、知らない人が隣に座っていたら、不快指数はさらに高まります。
 客室は狭い、座席も狭い、料金は高い、という、敬遠したい3拍子が揃っています。
 奥の客室扉はガラスの扉で、デッキにいる人から丸見えです。この先は運転台ですが、この列車が6号車で、7〜12号車も併結している場合、253系と違って通り抜けが出来るようになったため、普通車指定席が満席時に発行される立席特急券の人がガラス越しにチラ見することがあります(※立席特急券の場合、このグリーン車車両のデッキには立ち止まれないはずですが、空いているデッキを探しに立ち入る可能性はあります、となればもちろん、客室の中を見ることも十分あり得ます)。
 ある年の夏、253系のグリーン個室に乗った際、空調の調子が悪く、暑かった覚えがありますが、この列車は極端に暑い/寒いということはありませんでした。新車に変わって良くなったことは、調子が良くなった冷房だけです。

 このように、褒めるところが一切ないE259系のグリーン車ですが、ここまで酷いと騙される人は少ないようで、取材時(8月のお盆前半で、出国ピークといわれた日の朝の列車です)は、普通車は満席という車内放送がありましたが、グリーン車は私を含めて4人、しかも1人は外国人(東日本大震災の後の云々はあるとはいえ、253系の時はもっと乗っていた覚えがあります)、2人はハネムーンらしき人(通常なら普通席を選んだかもしれません)でした。全席指定の列車の普通車が満席でも、もし座りたかったら、仕方なくグリーン車を選択する場合もあるでしょうが、成田エクスプレスについては選択されなかったわけです。
 質の向上なんて考えは眼中になく、定員確保のためだけに2-2配列にして劣化させた結果、利用客がいなくなっても、車内の改良や値段を安くすることもしなくて済むのですから、JR東日本という会社は、経営的には順風満帆なのでしょう。


 これらの室内写真の車両番号:クロ259-1



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