上げ吐水


 上げ吐水とは、シングルレバー水栓(よくキッチンで見かける、レバー一本で水量や水温を調節・吐水が出来る水栓金具のこと)から水を出すときに、レバーを上げて水を出す方式のことである。最近のシングルレバー水栓は、特に注文でもしない限り、この上げ吐水の水栓が販売されている。
 しかし、この上げ吐水の流れは、つい数年前になってから一般的になった。それまでは、下げ吐水(上げ吐水とは反対に、レバーを下げると水が出る)が一般的ではなかったかと思う。日本で水洗金具のシェア第一位であろう東陶は、その“数年前”まで下げ吐水だったのである。東陶の新しいカタログ(2000-2001年版)を見たが、下げ吐水の水栓は一つもない。
 なぜ、この上げ吐水が主流になったのだろうか?話によると(全てが正しくはないかもしれません)、例えば地震が起きて上からものが落ちたとき、その物体が下げ吐水のシングルレバー水栓に当たると、レバーが下がり、水が出し放しになるから、と言う理由が一つにあるようである。また、世界中のシングルレバー水栓が上げ吐水だからだ、と言うこともあるようである。つまり、グローバルスタンダード、らしい。しかも、どうやら政府による通達らしいのである。
 グローバルスタンダードとは、世界標準の意味ではあるが、果たして世界標準だと使いやすいのだろうか。それらを宣言する外国人にとっては使いよくても、日本人には決してよいかどうかは分からない。DOS/Vパソコンのキーボード配列は、あれが事実上の世界標準だが、わざわざShiftキーを押さなければ大文字/小文字のロックがかからないなど、不便な点が多い。
 シングルレバー水栓の先祖は、井戸の手動(手漕ぎ?)ポンプだと私自身予想するが、あのレバーを、上に上げると水が出るのだろうか。また、レバー式の自閉式水栓(トイレなどの手洗器で見かける、レバーを一回押すと一定量の水が出る水栓)も、上に上げると水が出るのだろうか。外国の手動ポンプや自閉式水栓は、上に上げると水が出るかもしれないが、あいにく日本ではそういう商品は出ていないはずである。また、生まれたときからの慣習である「レバーを下に下げると水が出る」という意識が、その“数年前”を境に急に逆転するほど人間は有能ではない(最低限、私自身は)。
 国やメーカーの都合で、「今から変えてください」と言われても、そんなにたやすく人間の動作が変われるはずがない。下げ吐水に慣れている人が、例えば緊急時(火傷など)にレバーが下がらないと、慌てるであろう。どうしても下げ吐水がよい場合は、以前下げ吐水の水栓を売っていたメーカーの、“修理部品”を取り寄せて作るしかないかもしれない。今、下げ吐水の水栓金具を使っている人で、この“下げる”行為がごく当然と思っている人は、この水栓金具を大切にし、壊れても取り替えようとはせず、修理して使えるようにしなければならない。






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