インバウンド

掲載日2017年07月16日
 政府は、インバウンド、すなわち、海外からの観光客を増やそうとしている。島国である日本の特性を知り、来たくて来るなら構わない。ただ、最近の兆候は何となく無理矢理で、ごり押ししています、という印象すらある。そもそも東京で2020年に開かれる予定のスポーツ大会だって、世界平和やスポーツ選手の能力を高めるなどの目的なんかどうでもよく、ただ外国人観光客を呼び込みたいだけでしょ?


ホテルの弊害

 東京や大阪などの大都市圏や、京都などの観光地では、予約がとりづらくなった、値段が高くなった、という話がある。
 また、外国語を話せるスタッフを用意したり、外国語表示などでホテル側はコストがかかるが、これは何らかの形で値段に反映されることになり、外国語を使わない日本人も負担しないといけない。インターネットでホテルの予約ができる昨今、外国人(英文)と日本人とで値段が違うとは思いにくい。あったとしても、料金比較サイトみたいなところで一覧表示されれば、安いところを使われてしまうだろうから、意味がない。外国人が好きそうなプラン(金額高め)でも用意すれば別かもしれないが…。
 日本人と違って、週単位で長期間滞在できる外国人観光客も多く、となると、値段を最優先する人もいる。しかも、日本人なら治安が悪い印象があって宿泊を渋るような場所でも、自国よりは治安がいいと、気にせず利用することもあるようだ。高級ホテルだけが値段がつり上がるとは限らない。日本人が外国人によって追われるのは、食われることはないにしても特定外来種と在来種の関係のようである。
 それでも翻訳などは、まぁ合理的な出費かもしれないが、馬鹿馬鹿しい出費もある。中国人がホテルに泊まると、持って帰ってはいけない備品を持ち帰るという事例が多いようだ。客室には「禁煙 No Smoking」などの注意書きがあるものだが、とあるホテルに限って「備品を持ち帰らないでください」というニュアンスのような貼り紙が、中国語だけ記してあった。こういう場合、盗まれた備品の料金はその中国人には請求できないだろう。となると、それは、その他の善良な利用者の宿泊料金に跳ね返ってしまう。
 そして更に、17年7月頃のニュースによると、すでに東京や大阪で徴収されている宿泊税を全国で徴収しようという動きがあるようだ。その背景の一つにインバウンドがあげられている。金額としては、東京や大阪は1万円以上で100円だが、基本はこれに合わせるものと思う。上記のように宿泊料金が高騰する中、(今まで8000円だった宿泊費が1万円になり)該当する可能性もあるわけで、いい迷惑である。なぜ、外国人への費用を国民に求めるの?そんで免税とか言って外国人からは税金を取らないんでしょ?


乗り物(公共交通機関)の弊害

 最近の交通機関の表示は、日本語、英語だけではなく、中国語と韓国語も表示される会社や列車もある。
 台湾に旅行に行き、列車(MRT=地下鉄)に乗る際、中国語を見て自分の頭でちょっと置き換えて(漢字なので大きな違いはないが、ちょっと違う)、どこのホームに行く/ここで降りるなどしていた。日本に話を戻るが、4つも表示が変わると、それを日本国内でもやらないといけない。今までの日英だけであれば、英語さえ表示が終われば日本語の表示に変わるが、更に2カ国追加されてしまう。その数秒の間に、「この列車に乗らないといけない」など、判断をしなければならないこともある。何で日本でそれをやらないといけないんだろう。
 また、JRの駅では、「扉が閉まります」のあと、「Door Closing.」と英語も放送される駅もある。ただでさえ案内放送が多いというのに、今度は英語までしゃべってしまっている。このおかげで、出発の秒数も3秒は遅延するのではなかろうか。その3秒を、違うこと*に使った方が安全である。そもそも海外の場合、そんな案内どころか発車ベルがない国もあるんだから(ヨーロッパはおおむね)、閉扉するという案内がなくてクレームを言う人はいるのかを知りたい。
 そりゃあ、海外で日本語の表示があるとわかりやすいわけで、全部が全部反対とは思わないが、日本の場合はやりすぎなんじゃないかなぁと思うのである。
 *(違うこと):車掌の動作を見ていると分かるが、私鉄の場合は、ドアが完全に閉まったあとブザーを鳴らして、運転士に“出発していい”という合図を送るが、JR東日本はそれを省略している。(センサー上)ドアが閉まったことはJRの車両も私鉄の車両も運転士側にも表示(=知らせ灯が点灯)するので、普通は問題ないが、物が微妙に挟まっている場合など、車掌の目視的にはNGでも、知らせ灯が点灯すると、運転士はそのまま出発してしまう。その結果、挟まれた荷物が外に出たまま走行することになる。背景には駆け込み乗車も一つだろうから、日本おなじみの「自己責任」と言えばそれまでだが、乗務員としては無責任で済むのである。


表示・サインの弊害

 これは主にピクトグラム、自動車の道路標識についてである。
 ピクトグラムとは、言語の違う誰が見ても何を意味しているかが分かるという、1964年のオリンピックに向けて整備された日本発祥の表示らしい。その図柄を見直すというのだ。50年以上経過し、当時はなかったであろうコンビニエンスストアなど、加えるといいもの、新しい方がいいものもあるだろう。ところが…。
 現在使われている、というより日本人にとっておなじみの温泉のアイコンは、丸い浴槽の縁の上に、3本のS字曲線を湯気を見立てた図柄である。ところが、浴槽がお皿に、浴槽からの湯気の部分が温料理と勘違いするというクレームが入ったらしい。その代わりに、湯気を真上に移し、湯気と浴槽の間に人を置く世界標準の図柄が採用。しかし、ピクトグラムが出る昔から使われているという声も多く、結果、選択制になったようだ。だったらもう、料理に見えるんだったら「ゆ」でいいんじゃない?ちなみに、その世界標準の人の図柄、トイレなら男子トイレのアイコンのように見えるんですけど...。誰が見てもわかりやすくという気持ちは分かるが、日本人には分かりづらくていいのだろうか。

今までの温泉マーク+トイレマーク(男子用)=新温泉マーク

 また、自動車の標識も、世界標準に近づけていくという。これは、世界標準の標識と形状や表示が違い、日本の道路を運転する外国人が勘違いするからだそうだ。今まで見慣れてきた日本人に対して、喧嘩を売っているのだろうか。交通標識の場合、外国の人が間違いやすいから世界標準に合わせましょう→本物のサインと思わない(日本人が勘違いする)→事故という可能性は考えないのだろうか。アメリカ文化(アルファベット)の好きな日本人の一部に、国道66号線ではないのに「Route66」の看板(レプリカでしょうが)を掲げているところがあるが、それと同類と思われそうな気もする。
 まぁ、慣れれば解消されるのだろうが、その慣れる間に事故は起こっても、標識を無視していいのだろうか?日本は島国であり、海外との道路は海によって完全に分断されている。どうやら、どこかの国にトンネルを通すという策略があるようだが、それを見越してのことだろうか。治安の悪化は想像しやすいが、排ガス規制などが緩いだろうから、公害を日本に持ち込むことにもなるだろう。
 また、合法か違法かは分からないが、考え方による差も出てくると思う。以前、フランス・パリで観光バスに乗った際、道幅の狭いところを左折しようとしていた。しかし、そのままでは曲がることができない。なぜなら、路駐している乗用車が多かったのである。そもそも日本の道交法ならば、交差点の5メートル以内に止めるのはダメだが、まさにその5メートル以内に止めている。バスの運転士はクラクションを鳴らして早くどかすように促し、路駐している乗用車の所有者が来るまで待った…のではなく、なんとバスが左折したりバックしたりした後、車体で、その乗用車をグイグイと押しやったのである。


左折したい観光バスと乗用車の位置図・※あくまでイメージです。バスのドアの位置等々は大きく異なります。

 もちろん、車体をへこませるほど勢いをつけたわけではないが、バンパーには擦り傷は残るかもしれない。日本だとそんなことをやられた乗用車の所有者は、傷つけられたと警察に被害届を出す人がいてもおかしくないが、ヨーロッパでは合法なのかもしれない。よくよく見ると、日本でもよく見かけるドイツ車でも、バンパー部分が日本仕様よりもごつかった。で、何が言いたいのかというと、道路標識を日本式に合わせるつもりがないのなら、そういうバンパー押しも当たり前のように行うのではないか、ということである。「郷に入っては郷に従え」というのは、日本人が海外に行くことに従うもので、外国人が日本に来るときは従わなくてもいいと言うことなのだろうか。


郷(日本)に入っては(自国の)郷に従えってことですか?・バリアフリーと同じ

 色々な人に対応したら不便になると言う、トイレなどと同じである。ただでさえ昨今の四半世紀以上続く不況で旅行を控えている日本人が、結局、ホテルが高ければじゃあ旅行に行くのをやめようとする日本人が出てきてもおかしくない。
 日本に来る外国人観光客はおそらく、鉄道マニアで新幹線に乗りたいなどのニッチな理由でなければ、自然や昔からの寺院仏閣に興味を持ってく人が多いものと思う。しかし、今の政府は、スクラップアンドビルドや再開発をしたモノを見せ、外国人に迎合しようと言うニオイがする。
 何から何までグローバル化したいんですかね?その一方喫煙については、最近は減少しつつある喫煙者のためだけに、喫煙可能な場所を頑なに守ろうとしているクレイジーな思惑はあるようですが。

 純粋に観光しに来たのであれば、日本国内は決して治安は悪くはならないと思うが、その観光客に混じって犯罪者が来ていてもおかしくない。しかも以前と違い、外国人慣れし始めた日本人にとって、表現はよくないが外国人に対して警戒しなくなった。日本人同士も含め、ぱっと見ただけで、「こいつは悪さをしそうだ」と判別するのは難しいだろう。(テロを起こさないようにという後付けの大義名分で)17年6月中旬に、国民を縛る法律が成立されたが、(日本人には)テロを起こすかも…と、法律を作っておきながら、犯罪しに来るかもしれない外国人に対してはどうぞどうぞというのは、行政や政治的なものは縦割りなんだろうなぁと。




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