相変わらず 悪貨は良貨を駆逐させる JR東日本

掲載日2009年10月01日
追記2012年03月10日
 本来の、「悪貨は良貨を駆逐する」の意味は、悪質な品物と良質な品物が同じ価値として流通する場合、良質な方は自分の手元にとって置いて流通せず、悪質な方だけが流通すると言う意味ですが、言葉を文字通りに捉えた話です。

 2009年10月01日、成田エクスプレス(N'EX)に、新型車両が出来た。E259系という車両である。


 8月に成田空港に貼られていた新車をPRするポスター
 「グリーン車は本革張りでゆったりした座席」だそうです。JRの社員は、どんなに狭い座席でも、革張りにした途端、ゆったりした座席になると思っているようです。


成田エクスプレス(N'EX)・グリーン車の流れ

 「料金そのまま!」にも拘わらず、従来の253系と比べて、快適になりました旨、散々PRなさっている。ところが、快適になったのは、あくまで普通車指定席だけである。グリーン車は、この文脈から推測できるように、悪くなった。

 成田エクスプレスの、グリーン車の流れを簡単に説明する。
 253系成田エクスプレスデビュー当初は、1-1配列(0番台)だった。ちなみにこのような配列は、史上初ではなく、大昔、このような配列をした車両もあったようだ。また、この頃はドリンクサービスがあったようで、冷蔵庫に缶飲料があり、グリーン車利用客は自由に取ることが出来た。しかし、普通車の客までもが持ち去る事態が発生し、廃止となった。JR九州のように、客室乗務員などが持ち回るわけでもなく、車内販売として有料で販売することになった。以前、廃止理由をJR東日本に聞いたところ、汚れるからと言う、訳の分からない回答があったような気がする。缶ジュースで汚れると言うのなら、相当粗悪な缶飲料でも置いたのだろうか。

 その後、1-1配列と2-1配列が交互に並んだ車両も投入される(100番台)。言葉で説明するのも難しいので、253系100番台のページを参照していただきたい。0番台と比べれば、若干はどこかの寸法が切りつめられたかもしれない。
 ただ、0番台も100番台も、シートピッチが広く(確か1340mm)、グリーン車の客室の空間はかなり広々としていたことだろう。一方で、4人用のグリーン個室もあった(253系では現在も残っている)。鍵はないものの、他人から干渉されない落ち着ける室内である。

 その後、何か変わる毎に、粗悪になっていく。日韓ワールドカップによる増発の影響で、200番台のデビューである。かろうじて2-1配列(100番台と違い、全席)ではあるものの、E3系と同じような粗悪な座席になり、シートピッチが1090mmとなってしまった。客室全体も、今までの、航空機を意識したという独特な客室が、普通の列車の客室と変わらなくなった。0番台や100番台も、200番台と同じ粗悪な客室・座席に駆逐されてしまった。個室は辛うじてそのまま無改造だったものの、悪くするためにはあっという間に手を付ける。
 新造された200番台にも個室はあるものの、今までと比べると、多少、簡素化したようである。

 そして、09年10月のE259系デビューである。


E259系の粗悪な点

 今までのJR東日本とは違い、マスコミや、一般人(JR東日本のクレジットカード所持者)にも、試乗会をするなど何かを意識した、意味不明なPR活動をしているので、写真などは、各種検索をしていただきたい。
 (追記)当サイトにおいても、車内写真を掲載しました。E259系のページをご覧ください。

 写真などを見る限り、肘掛け周りが普通席に似ているスカスカなもので、さらに2-2配列になった。E257系などとほぼ同等の仕様になり、居住性は格段に落ちた。中央の肘掛けの幅ももちろん普通席並で狭く、グリーン料金を払ったのにも拘わらず肘掛け争奪合戦が至るところで起こってもおかしくない程度の幅で、隣席とは干渉し放題だ。シートピッチは1160mmと、新幹線を含めた他のグリーン車と同じである。JR側としては、パーソナル電源が付き(普通席にも付いている)、無線LANによるインターネットも出来る(同)、そして革張りの座席になったとPRしているようだ。しかし、電源は使わない人もいる(寝る人が電源を使うかどうか?)、無線LANは別途契約が必要なもので特に訪日の人は使えるのだろうか、革張りは滑るから好きではないという人もいる。結果、無関係だったり、目に見える座り心地の面でも粗悪になった。そして、グリーン個室がなくなった。ちなみに、グリーン席と普通席の座席の機能的な差は、フットレストの有無だけである(寸法は、ミリ単位で差はあるはずだが)。革張りでなければ、普通席と勘違いしてグリーン車に乗る人も相当数いるのでは、と思うグレードである。
 海外から来た客人に、追加料金だけは立派な、付帯サービスもない、普通席と同じような座席に座らせるとは、恥さらしもいいところである。

 やがて、E259系に駆逐され、253系は、10年6月末で廃止となる。9ヶ月で全列車が置き換わることになるが、他の列車の置き換えよりも、ペースがもの凄く速い(京浜東北線の209系→E233系などと比べて)。

 成田空港に行く手段は、鉄道の場合、京成スカイライナーがある。京成スカイライナーには特別席はないので対抗手段はないため、おそらく、JR東日本としては普通車指定席さえよければ他はどうでもいいという従来の考えを、そのまま展開しているのだろう。


変わらないのは値段と名前だけ

 このように、成田エクスプレスのグリーン車の座席やサービスは劣化していっている。一方、特急料金と共に、グリーン料金は「料金そのまま!」である。しかも、成田エクスプレスのグリーン料金は元々、一般的なグリーン料金よりも高い。この価格の設定当初は、1-1配列でドリンクサービスもあったので、割にあっていたのかもしれないが、今となっては、座席は三流以下、料金は一流の状態になった。(※一回、料金を下げたので、普通のグリーン料金とは別料金体系なのは“そのまま!”というニュアンスです。しかし、このE259系デビューより前に値段を下げたもので、“座席を粗悪にした分値下げした”というわけではありません)
 一方で、その特別席の名称は、この通り変わらない。例えば、JALが、特別席を、従来のスーパーシートを廃止し、よく言えば値段などが手軽になり、悪く言えば簡略化したサービスに切り替えたとき、「スーパーシート」から「クラスJ」と名称変更した。一方、成田エクスプレスは、1-1配列の広い座席も、2-2配列の粗悪な座席も、同じ「グリーン車」である。「腐っても鯛」と言うことだろうか。
 「グリーン車」という名称に対して失礼だと思う。JR他社と比べグリーン料金は安めだが、「グリーン車」ではなく、国際線で言う「プレミアムエコノミー」相当の、「クラスE」(E=East, Economy)というような別の名称にしてもっと値段を下げないと、割に合わない。普通車と同じ座席配列のこの特別席なら、特急料金からいくら引いてグリーン料金がいくら…など遠回しにせず、(指定席)特急料金に一律500円程度の追加が妥当だろうか。100km未満は事実上そうなっているが、「グリーン料金」とすると1,000円となり、座席の割には割高な印象を持つ。“一律数百円”なら、サービスのない、普通車と同じ2-2配列の特別席でも、それほど損した気分にはならないと思う。

参考・グリーン料金比較

 〜100km〜200km
JR東日本、JR九州以外\730\2,160
JR東日本新幹線、特急(除N'EX)\490\1,490
N'EX\1,490
 この表は、普通車指定席とグリーン席との差額を掲載しています(正式には、普通車指定席の特急料金から、\510引くのが正式な方法です)。


この話は、成田エクスプレスに限ったことではない

 車両が変わるたびに、「段階的に」悪くなっていった例は成田エクスプレスだけだが、他にも、このように悪くなった例は、すでにいくつか存在する。
 まずは中央線の特急である。2-1配列の183系(一部189系)から、2-2配列のE257系に置き換わってしまった。183系、189系とも、何故2-1配列だったのかというと、高速バスに対抗するためだったらしいが、今は、高速バスを相手にしていないか、高速バスから相手にされていないようである。
 そして、山形新幹線である。1992年の山形新幹線開業時に400系が登場し、その後、増備や置き換えでE3系2000番台が投入された。最終的には、2010年4月に廃止する直前には1編成だけ残っていたが、具体的にどの列車が、まともな2-1配列なのかという判断が出来ず、当日の運次第であった。
 今のところ、まともなグリーン席が残っている定期運行の在来線の列車は、251系(スーパービュー踊り子)、のみである(13年10月追記・E653系1000番台(いなほ)が、追加されました)。JR東日本の、良いものを駆逐する考えを流用すれば、おそらくこれらも、粗悪な座席に替わってしまうのであろう。いなほ号では2-1配列は復活したが、他の列車にも波及するとは考えづらい。


そしてその後(2010年12月10日、2012年03月10日追記)

 スーパーひたちとして使われる651系が、E657系に置き換わる、と言う発表があった。車内イメージイラストは、上記の予想の通り、悪貨に駆逐されてしまうことになった。
 そしてこれは、もう少し前の発表だが、首都圏〜成田空港間の移動について9月頃に調査したところ、京成のシェアが伸び、JRのシェアが落ちたそうである。新型スカイライナーの斬新さや「36分」という広告が手伝っているのだろうが、結局JR東日本は、新車を入れて客が減ったという、「バカじゃない?」と言う状況である。JR側は安いと思ってポスターに入れた「料金そのまま!」という意識(金銭感覚)が一般人の感覚と大きく乖離していることもあるだろう。まぁ、相変わらずのデフレでも(だからこそ?)、バス共通カードのプレミアをバッサリと切り捨てた関係者ですからね。
 また、2012年3月のダイヤ改正で、「一部列車の編成両数を削減および一部区間の運転を取りやめます。」とのことだ。普通車の利用者数も減っているのだろうが、割高感が浸透していってるのかもしれない。
 利用者のニーズに応えないと、こういうことになるのである。




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