(紙の)時刻表廃止について思うこと
21年1月搭乗分を持って、全日空が紙に印刷した時刻表の発行を止め、日本航空も日本航空で、5月搭乗分で止めるという。また、鉄道会社でも西武鉄道が3月ダイヤ改正分の時刻表を作成しないそうだ。
あくまで、コロナとは関係なく、以前から考えていたとのことだが、コロナによる影響で進んだと思っても嘘ではないだろう。
確かに今の時期は要らないかも
コロナ禍においては、確かに要らないかもしれない。というのも、単に紙だからウィルスが…と言う話ではなく、利用者が大幅に減り、減便をしている。この減便は日によって違い、9時発のこの便は、今日は飛んでも明日は飛ばないと言うこともある。となると、却って時刻表が足かせになることもある。
また、コロナに関係なく、紙の時刻表を見ると、下に注釈があり、“この日は5分延着”などの注意書きがあり、それによってその前後の旅程も変わる可能性もあると、最終的には予約画面に表示している時刻を当てにする節はある。
でも、今も「カタログ」としての価値がある
全日空が廃止するという発表の後、様々なメディアが全日空に取材をした際、“時刻表はカタログと思えと言うくらい手を抜くな”と教わった、というエピソードが書いてあった。
この話はあくまで航空会社の従業員向けではあるが、客としてもカタログという認識があると思う。というのも、何処に飛んでいるかが一目で分かるからだ。例え会社関係で向かう旅行でも、前泊/後泊が出来るような余裕のある旅程の場合、せっかくここに寄ったんだから、ちょっと足を伸ばしてここに行けるか、ということを考える際、近くの空港が分かり、このくらいの時刻の便なら行けるかな…と目星が付けられるので、大いに役立つ。また、近い空港だとこの機材しか飛んでいないが、隣の空港だと乗ったことのない飛行機が飛んでいて遠回りだけどこっちから向かおう、と言うのも、インターネットの予約だけでは調べづらい。
日本航空の場合は、紙の時刻表と同じ内容のPDF版を継続するとのことだが、これが何時まで続けられるかは分からないし、何より、紙に出した方が分かりやすい。旅行に限らず、資料を作成するとき、画面では見付けられなかったミスが、印刷して初めて気付くことと同じである。と言って、自分で印刷する場合、紙が分厚く、携帯することを考えると微妙である。
インターネットのニュースと新聞を比較するとき、前者は興味のある記事しか読まれないが、後者は幅広く見られる、という差がある。時刻表についても同じである。…なので、21年1月に全日空便に搭乗した際、保存用として余分2部貰ってきた。
そして鉄道ならではの話だが、自分自身が鉄道旅行を計画する際、「駅すぱあと」という検索ソフトを多用する。特に単線の路線で役立つ、小さな途中駅の到着時刻など、紙の時刻表には載っていない情報もあるからだが、一方で、紙の時刻表も参照することが多々ある。
検索ソフトは、あくまで、最短で到着するには最適だと思う。しかし、快適性までは考えていないのではないだろうか。
例えばこの時刻表(内容は架空のものです)の場合、湯河原から東京に向かうとしたら、検索ソフトは、快速列車の3760Mのみの結果しか出ないだろう。ただ、特に急いでいない場合、小田原で途中下車して、この駅始発の列車(普通・862M)に乗ることで、途中で駅弁が買えて、しかも座れる可能性がある。まさかそんなこと、AIでもなければ検索ソフトが見てくれるはずがない。
季節の変わり目だけでも
鉄道の場合は、3月の中旬頃の土曜日に大きなダイヤ改正があり、私鉄の時刻表は主に3月のダイヤ改正に向けて発売される。飛行機は3月と9月の最終日曜日に、「夏ダイヤ」「冬ダイヤ」とダイヤが見直される。
(私鉄の時刻表は元々そうだが)その大きな見直しのタイミングのときだけ、色々なネタを織り交ぜて有料でもいいので、出して貰いたいなぁと思う。東海道・山陽新幹線のグリーン車向けの冊子のように、機内誌(車内誌)の後ろに載せてもいいのではないかと思うが、全日空は、今後その機内誌すらゆくゆくは廃止する方向のようで…。
「トーマスクック時刻表」という、主にヨーロッパの列車の時刻が載っている時刻表があるが、インターネット利用者が増えたからと、13年8月頃に一度休刊したが、編集スタッフが別会社で引き継ぎ、14年3月に復活した。需要があるからだろう(趣味じゃあ出来ない)。日本国内の紙の時刻表も、やがて復活してもらいたいものである。
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