E3系列の功罪


 私は、「こまち」に5回、E3系「つばさ」に3回乗車している。この内指定席に乗車したのは2回で、他は自由席である。E3系を端的に表現すると「床面積の極限までの有効利用」つまり詰め込みすぎて余分なスペースはなく、「ゆとり」を失った鉄道車両の中の1つといえる。

  普通車座席寸評
 指定席車は、シートピッチ980mm、また、足下の空間が空いていて、足が伸ばせていい。しかし、最近の電車の共通の事だがモケットが少し固い。これは人間工学を基に長時間座っていても疲れないのは固いものということのようだが、やはり4時間も乗車すると疲れる。「こまち」用ではカバーが黄色で、汚れを目立たせないようにしている。しかし、今ではこの黄色が見るも無残に色あせてしまっている。「つばさ」用では、400系との兼ね合いもあってか、薄灰色のものを使っていて、こちらの方がいいように思える。自由席車は、シートピッチが910mmと、新幹線なのに国鉄形在来線特急並。これらミニ新幹線の区間は、かつて485系を用いていたが、新幹線区間から乗り継いだとしても、新幹線区間は980mmだったはずで、サービスダウンである。座席に座ると、膝が前の席にぶつかり、狭い。また、窓側から通路へでるときは、通路側の人も一旦立ち上がらなければならない。この座席で約4時間はかなりきつい。4人グループなど席を向かい合わせても、足の置き場が片座席分しかない。

  改善が見られないE3系1000番台
 97年の「こまち」用車両製造後、E653系や、E4系など座面スライド機構を導入した車両があるのに、「つばさ」用では、これらの改良点を加えず、「こまち」用と同様である。400系も1990年の試作車完成から10年が経過し、数年で置き換えとなる。おそらくE3系の増備となろうが、少しも接客設備を改良せずに共通化を図ろうとすると、国鉄と同じ道を歩むこととなる。

  400系からの技術的改善
 ミニ新幹線車両を2系列持つJR東日本は、ソフト面は効率化を進んでいるが、ハード面ではかなりの進展をした。STAR21による高速試験で、車両の気密構造がよりしっかりし、275km/h走行中でもいわゆる「耳ツン」がかなり改善されている。240km/hの400系に乗り、窓側の席で肘掛けと壁の間に腕を置いておくと、トンネル進入時やトンネル中でのすれ違い時に、大きく壁がきしみ、腕が挟まったり緩くなったりする。しかしE3系だと、これらのきしみはほとんどなく、快適である。

  いつも満席?の「つばさ」&「こまち」
 これらミニ新幹線の利用客は多い。首都圏から指定券を買おうとすると、運行当日の秋田、山形、新庄行きは、2本先の列車まで売り切れている場合が多い。これは、特に「こまち」で起こる。「こまち」は、長距離列車のため、自由席で座れない時の保険として、また、東北新幹線内の速達列車に人気が集中しているが影響している。おそらくミニ新幹線区間は空席も出るだろう。着席数を増やすために、座席を詰め、それでも座れないとなると、全くこのコンセプトの意義はなくなる。また、満席となるのはグリーン車からだ。これは、長距離の運転のために、少しでもいい席に座っていこうという考えからだと思う。もしくは、グリーン室の小ささによって、輸送力不足が起きているのだろう。400系からE3系になって座席配置が1列増えたのはこのためだろうが、そうなることを予想できるなら、最初から1両増やして、グリーン車後部のトイレ等を隣へ移動させ、グリ−ン定員を増やすべきだった。ただ、JR東日本は国鉄とは違い、普通の民間企業であるので、その1両増結には慎重であったという点はやむを得ないことであったのだろう。

  「ゆとり」を取り戻すために
 今後、JR東日本は、羽越本線を酒田まで標準軌とする計画だ。このときもE3系を基とした車両もしくはE3系を作るであろう。東京〜新庄はおそらく4時間程度の所要時間を要することとなり、また、今までのミニ新幹線とは違い、県庁所在地駅を経由せず、乗客は今までほどではないと思われる。現行の「いなほ」では、村上以北で乗客は少ない。よって、このときには是非とももう少しゆとりのある車両を作っていただきたいものである。






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