JR東日本・名前だけの窓口


 大手企業各社には、利用客の意見、苦情、質問などを承る専用電話がある。鉄道会社でも、ここ数年前からそういう窓口を設置している。JR東日本では、JR発足翌年の1988年から「お客さま相談室〔旧 グリーンカウンター〕」という窓口を、大きな駅に開設している。この窓口は、電話の他に直接出向いての応対もしてくれる。

 しかしこのお客さま相談室、旧国鉄の粗悪な応対を改善しようといち早く開設した点は評価できるが、内容はお粗末である。資料によると、お客さま相談室と本社を結ぶ専用ネットワーク(グリーンカウンター時代は、“グリーンシステム”と称していたような気がする)まで敷設し、利用客からの意見や苦情はすぐに中央へ行くようなのであるが、本当に届いているのかは分からない。また、お客さま相談室に意見を送っても改善されなかったものが、偶然かもしれないが実際に乗って車掌に苦情を言ったら1ヶ月で改善されたものもあった。

 また、あくまでこの窓口は、広報的な要素も併せ持っているはずである。しかし、新聞で掲載された記事(もちろんJR東日本が発表した事柄)への質問に答えてくれるまで、幾日もかかったこともある。その回答のほうも、新聞できちんと発表された内容にも拘わらず、「社内で情報が混乱している」というようなものだった。巨大すぎる組織ならではの問題点でもあろう。

 このお客さま相談室は、手紙による質問に対しては歓迎していないようである。こちらから電話をしないと、到着した旨の手紙すらよこさない状況である。また、それらの回答も(今は改善されているかもしれないが)文面が役所的で、抽象的な答えしかないものも多かった。

 そのくせ、お客さま相談室担当の制服は深緑色の、通常JRマンとは別の制服を着用し、見栄えだけはこだわっているようである。しかし、ズボンの色はバラバラだった(並んでいた二人の、ズボンの色は合っていなかったような気がする)。

 その、新聞記事の内容を知らないというような理由を、知ることが出来た。理由は、お客さま相談室の方は地区ごとの管轄で、新聞記事は本社からの発表によるものだからである。つまり、中央で発表したものを地区には報告しないので、その地区は知らない、と言うことのようである。一方で、JR東日本のホームページに行くと、“意見を承るメール”のコーナーがある(フォームに氏名や意見を入力し、その場で送信するタイプ)。そちらの方は、本社直結のようである。まさか、2つの経路があるなど、利用客は知る由もない。同じ質問をお客さま相談室とメールでそれぞれ問い合わせると、違った答えが返ってくる、と言う可能性も、あるのである。それにしても、問い合わせたところによって、知っていたり知らなかったりの差があるのは、良いはずがない。

 この窓口、結局は「ひとまずこういう窓口を作っておけば客は納得するだろう」という考えで設置しているのかもしれない。






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