JR東日本 グリーン料金値戻しへ
※JR東日本の特別席のタイプはいくつかあり、料金も異なりますが、それらをひっくるめて「グリーン料金」と表現します。
JR東日本は、新幹線・特急列車のグリーン料金等の改訂についてと、特急・急行料金のグリーン料金を来年値上げする旨、21年10月26日に発表された。インターネット上のニュースでも多くの媒体が紹介しているが、グリーン車を紹介することがメインコンテンツのこのサイトでも、一応扱わないわけにはいかないだろう。
JR東日本のグリーン料金は2002年12月に値下げをし、他のJR旅客会社(北海道・東海・西日本・四国)とは料金体系が違う。なので、今回は値戻しをするという表現の方がしっくりくるかもしれない。
一方、このサイトでも散々紹介しているとおり、JR東日本の在来線特急車両のグリーン席は、ごく一部を除いて酷い。重箱の隅をつつくように見ないと、普通席との違いが分からない座席が大半である。JR北海道・JR西日本・JR四国の特急列車のグリーン席は全車種2-1配列だが、JR東日本のグリーン席の大半は2-2配列と狭い(配列については特別席の基礎知識 座席の特徴をご覧ください)。以前書いた「相変わらず 悪貨は良貨を駆逐させる JR東日本」では、他のJRとはグリーン車の名称を変えて欲しいと書いたくらいだ。同じくグリーン料金が他社より安いJR九州はそういう訳ではなく全車種2-1配列だが、首都圏に路線を持っているJR東日本は、普通席をほぼそのままグリーン席にしても客は乗ると高をくくり、天狗状態になっているわけである。JR他社と比べて座席は悪いが、それでも値段は安かったのは救いかもしれない(私としてはそもそも解せないが)。
値戻しをすることで、値段は他社と同じ、座席は普通席のままという状態になるのである。
値上げに際し、普通席並みの座席がマトモになる可能性を考えてみたが、10年・20年先でそうなる可能性は否定はしないが、おそらく現時点では考えていないだろう。というのも、プレスリリースには、「お客様のご利用状況および経営環境の変化をふまえ」と、コロナ禍で利用客が減ったからというニュアンスの文言が書いてある。
普通、プレスリリースを発表するのであれば、サービスを改良しますというような良い発表の最後に、値段を改訂しますと、ひっそりと値上げの発表も入れることがよくある話だが、それが今回は値上げの話しかしない、つまり、座席はそのままなのが想定される。また、座席を替えるのもタダではないわけで、経営環境が悪いのに積極的に設備投資をするとも思えない。値上げをしたのに新車の座席が悪いままなら印象はかなり悪くなるだろうが、踊り子号用から185系が引退するなど、ある程度新形式を投入するタイミングも落ち着き、もしかしたら丁度よいと思ったのかもしれない。JR東日本のグリーン車が2-2配列にした建前は、定員を確保するというものだが、「お客様のご利用状況」という文言からすると減ったことになるわけで、定員を確保という言い訳は今後は通用しない。今後の新形式のグリーン車も2-2配列のままなら、貧相な座席でコストダウンすることが本音であり、その建前は嘘だったことになる。(E259系など、半室程度のグリーン室にしている時点で、既に建前は嘘なのは表立っていますが)
安かろう悪かろうだったJR東日本のグリーン車が、高かろう悪かろうになるわけである。コロナ禍において、都道府県境を越えた移動は止めてくれと言う発表があり、20年4月に乗車した上越・長野新幹線のグランクラス・グリーン車は貸切状態だったくらいなので、経営環境の変化はよく分かるが、高かろう悪かろうで収益は上がるのかな、と言う気はする。時事通信社の記事によれば、「JR東によると、年間数億〜十数億円の増収効果が見込める。」とのことだが…。まぁ、値上げして利用者が減れば、私的には誰もいない客席の撮影はしやすくなるんですけどね。
批評文のインデックスに戻る