JR東日本・2002年12月に変化

掲載日2002年10月09日
 まずは、JR東日本が、2002年10月8日に出したプレスリリースをご覧ください(http://www.jreast.co.jp/press/2002_2/20021003.pdf)。下部と同じ内容のPDFファイルです。


12月1日ダイヤ改正からの新幹線の車内サービスについて


 JR東日本では、12月1日のダイヤ改正より、「はやて」「こまち」のグリーン車にサービス専任スタッフ「グリーンアテンダント」を乗務させ皆さまの旅のお手伝いをさせていただくなど、新幹線の車内でのサービスを充実いたします。


1. 「はやて」「こまち」のグリーン車では、「グリーンアテンダント」によるサービスを行います。

○お飲み物とおしぼりをお配りいたします。
 お飲み物は温かいものと冷たいものをご用意しておりますので、ご希望にあわせてお選びいただけます。
○車内販売は勿論のこと、八戸や秋田周辺のパンフレットもご用意するなど、お客さまに旅の気分を満喫していただけるよう、きめ細やかなサービスを提供いたします。
※グリーンアテンダントによるサービスは、東京駅発着の「こまち」「はやて」のみとさせていただきます。


2. 全新幹線において、車内で快適にお過ごしいただけるような基本的なサービスを充実いたします。

○グリーン車では、車内の棚に「ひざかけ」をご用意します。また、車端のマガジンラックに弊社が発行しております「大人の休日」「時刻表」をご用意します。
○現在、新幹線・在来線のグリーン車などに搭載しております「トランヴェール」は、新幹線専用の車内搭載誌として装いを新たにして、普通車の座席にも搭載します。
車内のLEDでは、ニュース・天気予報・営業案内などに加え、輸送障害が発生した時には、新幹線と新幹線に接続する在来線の列車の運行情報をお知らせします。
○各車両のデッキに掲示しております車内設備案内と新幹線時刻表は、表記の大きさや色使いを工夫し、わかりやすいものへ変更します。
○車内販売では、沿線のお弁当やお飲み物などお客さまのご要望にお応えできる品揃えを充実させます。また、ワゴンが来る前にお買い求めの品がお選びいただけるよう、基本メニューをトランヴェールに掲載します。
※搭載品の一部には限りがございます点をご了承ください。
※新サービスを開始するにあたり、現在、各新幹線のグリーン車で実施しておりますドリンクサービス等につきましては、11月30日をもちまして終了させていただきます。


 一見、サービスが良くなったと、見受けられる。しかしそれは、あてはまるのは「はやて」号だけである。

ちなみに、まとめてみると、はやて号以外で…
増えるもの
 ひざ掛け、車内に「大人の休日」「時刻表」、車内LED表示にて輸送障害発生時のサポート
無くなるもの
 飲み物、おしぼり、トランヴェール(在来線)

 単純に数で言えば、増える方が多い。しかし、それはプレスリリースを見るだけで判断したときである。現実を見てみる。まずはひざ掛けだが、飛行機のように人数分用意するのであれば別として、実は、02年11月までの時点で、どこかに置いてあったはずである(ちなみに、JR東日本曰く、02年12月以降は、やわらかく手触りのよいものに改善し、また搭載枚数を増やしたそうですが、人数分ではない模様です)。時刻表も同じである(ある列車も、ない列車もある)が、グリーン車利用客の場合、車掌に頼めば、車掌の持っている時刻表を見せてもらえなくはないだろう。そして輸送障害発生時のサポートは、あくまで「非常時」である。そもそも、そういう出来事を発生させないことの方が重要である。また、情報が来ないので、事故が発生しても何も表示できない、と言うのがオチかもしれない(事故発生後に、首都圏のJRで『間もなく発車します』と放送して10分経って出発したような例)。つまり、これらは、曖昧だったり、そうでありたいというものを明文化した程度で、わざわざプレスリリースで大々的に掲示するものではない。
 一方で、無くなるものだが、直接的な、個々の利用客に費用が掛かるものに関するものである。在来線では、唯一(JR東日本の在来線で唯一、ドリンクやおしぼりのサービスが現存するスーパービュー踊り子号(SVO)を除く)の付帯サービスであった、トランヴェールも廃止した(これはSVOも廃止)。ただでさえ普通車と大した差はないグリーン車で、さらなるサービスダウン、と言うことである。しかもこれらは、目立たないように書いてあるのは言うまでもない。しかも、ろくでもないサービスの内容にも拘わらず「新サービスを開始するにあたり」と廃止の理由を記載している。
 「より良い世界のために、誰々が犠牲にならねばならない」と考える独裁者(→より良いのは独裁者だけ)、と表現すると大袈裟だろうか。


 「はやて」に関して言えば、実際に乗ってみなければ分からないが、台車に「フルアクティブサスペンション」を採用したことによる乗り心地の改善や、トイレに温水洗浄便座を導入することもあり、お勧め度で☆を5つあげてもよいかもしれない。しかし、それ以外の列車は、概ね減点と言ったところである。ちなみに、「こまち」は座席が元々悪いので、×には変わらない(付帯サービス以前のどうしようもない問題)。
 「グリーンアテンダント」(GA)を乗務させる旨書いてあるが、以前、JR東日本では「ソワニエ」という女性乗務員を乗車させていた。業務内容は、GAとほとんど同じはずだが(違う点は、ソワニエはJR東日本が雇用し、GAは車内販売の営業会社が雇用しているようである)、気付いたら廃止していた。また、こまち号がデビューした当初、持ち帰れる観光ガイド(かなり分厚いもの)が背面ポケットに入っていたが、すぐになくなってしまったようである。つまり、これらのサービスが半永久的に続く可能性は、極めて低い。つまり、「グリーンアテンダント」が、気付いたら「車内販売のおばちゃん」に戻っているのである。
 また、車内販売を今以上に重視していることも記載してある。悪く言えば「どんどん押し売りしまっせぇ」ということだろうか。グリーン車のサービスのうち、飲み物の廃止も、「押し売り」に関連する(配らないが、その代わりに有料で売ると言うこと)。


 結果としては、「はやて」以外の新幹線、在来線はサービスダウンすると考えて間違いない。一方で、「そういえば、値下げするのでは?」という質問がある。それは、間違いではないが、2003年11月末までの期間限定である(料金の計算方法が半永久的に変わるので、本当に値下げする列車もある)。一方で2003年12月になると、飲み物などが戻るかと言うと、そうではないはずである。それこそ、1年が経過し、ほとぼりが冷め、沢山投資した「はやて」の資金を回収すべく、もっと酷になるかもしれない。

 JR東日本は、2002年7月に完全民営化した。これを機に、制服(→外見)も変わった。そして、いかにも「サービスを良くします」と言わんばかりのプレスリリースだが、結局はサービス廃止をごまかすためのものと言っても過言ではない。ある飲み物のCMではないが「中はドロンドロンよぉ」である。もちろんJR東日本に限ったことではないが(日本航空システム〔ここも、元国営企業ですね〕では、人気だったサービスを『わかりやすく』という名目で廃止した、等々)。
民営化していない頃のJR東日本と、大して変わらない。


(この文書は2003年01月26日に、当時の“今”を、現在の“過去”に修正しました)

この文書の公開当時から想定していた、サービスの廃止が現実となりました。「LQC化のますます進むJR東日本・2015年03月に変化」をご覧ください。




批評文のインデックスに戻る