1時間かけて36分に乗る

掲載日2010年06月23日
 2010年7月17日(土)に、京成電鉄に、成田空港に向かう新しい路線ができ、新しいスカイライナーができるという。

 今までは、首都圏から近隣の海外に行くとき、2時間かけて成田空港に行って、2時間かけて海外に向かうような、なんだかおかしな状態だった。それが、今後羽田空港からも行けるようになったり、成田空港へのアクセスが早くなることにより、空港までのアクセスの時間が短縮されるようになる。その後者の例が、新しい路線の成田スカイアクセスであり、その新路線を走る新型スカイライナーである。首都圏から成田まで、従来より15分短縮されて着いてしまうという(上野〜成田空港第1ターミナル間:44分・CMなどでPRしている36分とは、日暮里〜成田空港第2ターミナル間)。また、本数も今までよりも増え、列車の待ち時間も短縮されるはずである。

 ところが、今回の成田スカイアクセス・新型スカイライナーデビューにより、空港への所要時間は短くはなるはずだが、ほとんどの人は、空港へのアクセスとしては便利になるかどうか…である。

 そりゃあ、早く着けばいいに越したことはないが、基本的には海外旅行は、家などの出発地は余裕を持って出て、空港に向かう。なので、15分短縮したくらいでは、大したことはないようにも思える。出発地が日暮里駅から徒歩5分です、と言うような人にとってはすこぶる便利だろう。
 また、速度は確かに速いようだが、上野や日暮里からしか出発しない。上野とは言ってもJRの上野駅から行く場合、一度外に出て横断歩道を渡り、屋根のない道を歩き、階段を下りるなど、一言で言えば遠いため(※横断歩道などを渡らなくてもいい方法があれば教えてください)、日暮里駅からの利用が多いだろうが、日暮里まで行く手間はどうだろうか。スピードも重要だが、結局は、乗り換えの少なさ、大きな荷物を無難に運べる利便性も重要だ。そんなことがあると、15分なんてあっという間に打ち消されてしまう。
 成田スカイアクセス開業に伴い、日暮里駅を大きく改修したようだが、スカイライナー用のホームは広いとしても、周辺はどうだろうか。日暮里に行くにはJR山手線・常磐線か舎人ライナーを使う人が多いだろうが、スカイライナーのライバルである成田エクスプレスを運行するJRが、スカイライナーのために日暮里駅を整備するわけがない。そこまで行くまでにまず疲れそうである。

 一方、そういう乗り換えの利便性を考慮した、羽田空港〜(京急線)〜(都営浅草線)〜(成田スカイアクセス)〜成田空港間直通の列車「アクセス特急」もあるが、「特急」とは言いながらもあくまで速度だけの話で、専用の荷物置き場もない3ドアロングシートの通勤電車である。朝や夕方は、もちろん通勤ラッシュに巻き込まれる。羽田〜成田間を通しで乗る人は、首都圏以外の日本各地から羽田に着き、成田に行く人か、海外から来た外国人が国内線に乗るために羽田に行くパターンがほとんどで、首都圏の通勤ラッシュに慣れていない人が多いだろう。大きな荷物を持っているときは、首都圏の人間も一番使いたがらない状態の列車である。

 そこで…南海や名鉄で見かけるような、8両編成の内、例えば2両を座席指定車にするだけでも、大きく違うのではないかと思う。

<羽田空港〜成田空港間『アクセス特急』・編成例(要望)>
87654321
自由自由自由指定指定自由自由自由
←成田空港    羽田空港→


※羽田空港・国際線ターミナルにはホームドアがあるようなので、そのドア位置に考慮した車内配置
※都営・京急線内では停車時間が短いことが予想できるため、2ドアにて
※一応、このサイトは「特別席」をメインに扱うサイトではありますが、この列車に特別席を設けて欲しいとまでは言いません...
※停車時間を考慮した上で、ドアを車両の中央に一箇所のみ設置して、荷物置き場を客室内に置いた場合の図


 あの高い料金を取る成田エクスプレスは、JRのネットワークを駆使し、いろいろな場所から乗れ、荷物スペースもあり、そういう意味では利便性は高い。ただし、金額が高い割には快適性は低いが。


 せっかく、都心を走る都営浅草線と、横浜方面に走る京急線という、南に延びる相互運転があるのだから、そして、現行のスカイライナー(2010年7月以降はシティライナー)AE100系も、地下鉄で走ることを前提にしたような構造(貫通扉がある)なのだから、上野・日暮里からは新型車両で早く着く座席特急列車を走らせ、それ以外からは乗り換えが少なくてもすむ座席特急列車を走らせれば、だいぶ利便性は高いのではないだろうか。まぁ、おそらく京急線に走らせるとなると品川も発着し、成田エクスプレスとの直接対決になるだろうが、リクライニングシートの特急車両で、料金が安ければ悪くはないとは思う。またなにより、JRよりも事故などによる遅延が少なく定時発着率が高い。JR線は、人身事故でもあると、1時間は平気で止まってしまう。そして、地下鉄の有料座席特急は、すでに東京メトロで「前例」があり、走ってはいけないわけではない(走らせたくないと言うであろう都営地下鉄の言い訳は通用しない)。

 今の状態では、有名なデザイナーに車両デザインしてもらったことと、速度の自慢をしたいだけのようにしか思えない。利便性を高めるには、速度だけで済む問題ではないことを知ってもらわないと解決できない。
 また、この文章のメインは成田空港へのアクセス鉄道の話だが、この先、羽田空港の国際化や発着枠が増えることで、更に羽田空港を使う人も増える。そのためにも、羽田空港へ向かう鉄道車両の、質の向上が必要なのではないか。羽田空港は国内線がメインとはいえ、旅行前後なのは成田空港と変わらない。大きな荷物を持って通勤列車に乗るのは、ストレスが掛かるのは変わらない。


Wikipediaによると、スカイライナーの車両を羽田空港まで走らせようとした話もあったらしいが、京急蒲田付近の物理的制限により不可能だったとのこと。しかし、その後、この区間は大規模な工事があるため、現在ではどうなのだろうか。また、泉岳寺・品川まで来てもらえる=都心を通るだけで、大きく違うはずである。


批評文のインデックスに戻る