沖縄のボンQと青函トンネル

掲載日2016年04月03日
 16年3〜4月に、日本の北と南で、公共交通機関に変化が生じた。

まずは「沖縄のボンQ」

 琉球エアコミューターが、16年4月から、新たな飛行機を導入する。ボンバルディア社の「DHC8-Q400CC(カーゴ・コンビ)」というプロペラ機だ。ちなみに「ボンバルディアDHC8-Q」を略してボンQと略される。「コンビ」というのは、列車で言えば客貨混合列車と表現すればよいだろう、旅客機と貨物専用機を足して2で割った飛行機のことだ。今までも、客室の前後のほんの僅かなスペースに(旅客用の預け荷物とは別に)貨物を積んでいたが、この飛行機は客室に使えそうな部分まで貨物スペースにしている。海外ではジェット機でそこそこあるが、国内で、しかもプロペラ機では珍しい。
 貨物は、従来機の2.5倍搭載できるようになり、沖縄の海の幸などを、従来よりたくさん輸送できるようになる。今までカジキマグロは2頭しか積めなかったのが、5頭積めるようになるらしい。輸送量が大幅に増えたため、輸送単価が安くなることもあるかもしれない。
 といって座席がその分狭くなったり客席数が少なくなったわけでもなく、座席そのものも、ジェット機などと同じような仕様になるそうだ(が、従来機は7席ほど可能だったリクライニングは、全席不可になるようだ)。


ボンバルディア DHC8-Q400(航空会社も違えばコンビ型でもありませんが、このくらいの大きさの飛行機です)

そして「青函トンネル」

 2016年3月26日から、新幹線が北海道まで走るようになった。つまり、青函トンネルが新幹線に対応したわけだが、青函トンネルは、それまで走っていた特急(スーパー白鳥など)や寝台列車(北斗星やはまなす、トワイライトエクスプレスなど)など旅客列車の他、貨物列車も数多く走っている。新幹線と貨物列車では線路の幅が違うが、青函トンネルでは、新幹線も貨物列車も走れるような線路になっている。
 そんな中、このような新聞記事が見つかった。 

JR貨物:青函トンネル、貨物に付加料金 農家の収入直撃
 ◇北海道新幹線の開業に伴い、4月から導入
 北海道新幹線の開業に伴いJR貨物(東京)は4月から、青函トンネルを通過する貨物列車のコンテナに付加料金を導入する。新幹線と共用するトンネルの架線電圧が上がり、新型電気機関車の導入など設備投資を迫られたため。値上げはコンテナ1個当たり1000〜2500円で、年間では約10億円に上る見込み。農産物輸送に利用するホクレン農業協同組合連合会(札幌市)は「農家の収入に影響する」と懸念している。【遠藤修平】

 JR貨物によると、現在の札幌〜東京間の基本料金は6万円。青函トンネルを含む約82キロの区間は、新幹線と貨物列車が共用走行。このため架線電圧が変更され、JR貨物は約160億円をかけ新型電気機関車17両を導入し、機関車の専用検査設備を新設した。同社は設備投資の費用を回収するため、2018年度末までの3年間、付加料金を設定することにした。

 青函トンネルは1日平均40本の貨物列車が通過。14年度は計約250万トンの物資が北海道から本州に運ばれた。このうち、タマネギやジャガイモが約3割を占め、砂糖や米、乳製品なども含めると、約5割は農畜産物が占める。

 約70万トンの農産物輸送で貨物列車を利用するホクレンは影響額を年間約1億4000万円と試算。ホクレン広報総合課は「付加料金についてJR貨物から事前の説明はなかった。影響額が大きいので、フェリー輸送への切り替えも検討したい」と話す。

 一方、本州から道内へは書籍や宅配商品など年間約230万トンが運ばれるが、物流大手のヤマト運輸(東京)は「輸送全てを貨物列車に頼っているわけではないので、(付加料金が)大きく影響するとはみていない」としている。

 ◇格差解消に逆行
 北海商科大の佐藤馨一教授(地域交通論)は「青函トンネルや新幹線は、北海道と本州の格差を解消するために造られた。新たな料金設定は本末転倒。本来はJR貨物の企業努力で解消すべきものだ」と指摘している。JR貨物は19年度以降の付加料金について、「現時点では未定」と説明している。

 ◇青函トンネルの共用走行区間
 北海道新幹線新青森〜新函館北斗(約149キロ)のうち、青函トンネルを含む約82キロは全国で初めて新幹線と貨物列車が走行する共用区間となっている。新幹線開業に伴い、架線電圧は従来の在来線用の2万ボルトから新幹線用の2万5000ボルトに引き上げられ、従来の車両は通過できなくなった。
毎日新聞2016年3月31日 北海道朝刊 http://mainichi.jp/articles/20160331/ddr/041/020/003000c

 こちらは単純な値上げだ。新幹線と併走することで、貨物の所要時間が短くなったわけではない(はずだ)。「JR貨物は約160億円をかけ新型電気機関車17両を導入し、機関車の専用検査設備を新設した。」とあるが、新幹線開通まで使っていた、青函トンネル内を走行する電気機関車(ED79)は一番新しくても1989年製で、2016年時点では27年が経過している。まだ走れる車両ではあろうが、青函トンネルという特殊な環境(雪害や塩害)から、世間一般の電気機関車と同じように考えてはいけないわけで、新幹線が開通しなくても、そろそろ次世代の機関車を導入させる必要はあっただろう。一方、“専用検査設備”を設けたとなると、普段の更新とは違った出費はあるだろうが、急に決まったのだろうか。「(サービスは同じだけど)新車を導入するので追加料金をちょうだい」というパターンはあまり見かけない。料金そのまま!である。
 新幹線になることで、旅客の方ももちろん値上げした。一方、新幹線になったからと言って、劇的に時間が短縮できたわけではない。それは、青函トンネルでは速度を出せないというのと、16年3月現在の北海道新幹線の終着駅は「新函館北斗駅」という、函館駅から17.9km離れ、3月25日までは普通列車で約30分かかり(新幹線開通後は接続列車乗車で15分に短縮)、普通列車しか止まらなかった元「渡島大野駅」である。もちろん、渡島大野駅から徒歩5分で家や会社の支店があれば、これだけすばらしい新幹線はないだろう。

 新幹線の本数は、上下で25本程度、一方貨物列車は40本と、青函トンネルのお得意様は、人<荷物となるが、貨物が冷遇されている気がする。「新幹線」という免罪符を掲げることで、値上げをしてもOKという認識があるのだろう。



 この二つに共通する話としては、東京へも送る貨物がメインである。沖縄の場合は、輸送量が増えれば、現地の漁師の収入も増えるかもしれないが、北海道は、運賃が掛かることで、収入は変わらないとしても経費が掛かり、結果可処分所得は減る。利用客に転嫁できるかどうかや、他の交通機関を使えばまた話は違うだろうが、最近、環境負荷のために鉄道にシフトしていくという流れに逆行する(しかも、その要因を作っているのが鉄道会社である)。
 北海道の野菜など、東京(などの大都市)で消費されることは十分にあるが、なかなか貨物の話は聞こえづらい。自分自身が、単純に旅客機・旅客列車を意識しているだけかもしれないが、今後は貨物にも少しは深掘りできればと思う。




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