列車の座席の座り方


 普段の通勤電車で、詰めてもらえば座れそうなことがよくあります。座りたいけれど座れる程のスペースがなく座れなかった…という経験は誰にもあるはずです。そこで、なぜこのような事態になってしまうのか観察してみました。ここでの席の埋まる原理は、全て観察した結果を基にした理論で、必ずしも全てが当てはまるものではありませんのでご了承ください。

◆7人掛ロングシート(通勤電車等)編◆

---最も多い席の埋まり方---

 人間は、本能的に自分の近くに他人が近接することを避けます。その結果、誰もいない長イスがあったとき、ドア近くの端の席(@、F)がまず埋まります。両側が埋まると、両端から一番遠い中央部(C)が埋まります。そして、中央部と端の2人分の席の中央(ABの間、DEの間)に1人ずつ座ります。ここで7人がけに均等に5人が座りますが、まだ余裕があるために、次の乗客は声をかけて余りのスペースを広げてもらいます。6人も座ると各人間のスペースが少なくなり、大体がこれで落ち着いてしまうというわけです。

---ポイントとなる席---

 上の原理から考えていくと、A、Eに座る乗客がポイントとなります。試験的に最初この席に座ってみると、かなりの確率で、速やかに定員通り座った事が確認できました。

---各社の改善策---

 各社がまず考えたのが長イスの生地に柄を付けて区分させる方法です。しかしほとんど効果がなかったような気がします。次にバケットシートとして、凸凹を付けた方法です。これは、着席位置から少しずれる時には効果がありますが、各着席位置の中間に座るとあまり違和感がなく、原理通りにいった場合5人で完全に落ち着き、6人目が座ると、着席位置が各人微妙にずれて不快になる人が増えているように思えます。
 ポイントとなるA、Eに確実に座らすことの出来るように、JR東日本は、AB間、DE間に握り棒を設置しました。これは、着席定員の確保だけでなく、混雑時の通勤客やつり革に届かない子供等の新たな握り場所として一石二鳥の役割を果たします。この工夫は京浜東北線209系以降の4ドア電車に標準装備されています。この工夫をした座席の場合、ほとんどの場合@F、BD、ACEと座っていきます。今のところ最善の方法ですが、体格の立派な乗客が@AEFに座った場合かなりきついという難点があります。
 東京臨海高速鉄道、小田急電鉄、京王電鉄等の私鉄では、BC間のみに握り棒を設置しています。これだと、@、Fの他はランダムに埋まっていきます。4席分が連続しているので、DE間に座る人が少なくないようです。また、東急では、仕切を設置していましたが、最新車では消滅しています。近鉄の21シリーズでは、端の一番ドアに近い部分に仕切を設けていますが、これは、定員対策と言うよりは、高齢者対策によるものであります。

◆4人掛ボックスシート(中距離電車等)編◆

---最も多い席の埋まり方---

 4人がけの場合(下図をご参照ください)、まず進行方向に向いた窓側の席(@)が埋まります。次に最初の乗客から一番遠くなる位置、つまり@の対角のBに座ります。3番目の乗客は、窓側が空いていても、声をかける手間を省きたいために通路側の空き席(A)に座ります。大体がここまでのことが多く、1両全部がほぼ同じように埋まってしまうと、どうしても座りたい乗客や勇気のある乗客が声をかけて窓側の空席(C)に座ります。

---ポイントとなる席---

 上の原理から考えていくと、A、Bに座る乗客がポイントとなります。2番目に来た乗客が窓際に座ればいいことになります。4人座らせようと思ったら、まず、初めの人は窓側に座るのを少し待ち、やがて通路側に来たら窓側に移るべきでしょう。しかしこれを実践するのは、初めの人が意識し、更に自分が動かなければ行けないと言う動作が入るので、ロングシートの時よりも難しいでしょう。

---各社の改善策---

 今のところボックスシート自体での改善策は見かけません。転換クロスシートにして窓側、通路側と完全に着席させる方法が今のところ多いと思われます。もう一つの方向として、ロングシートに方針転換した事例も多いです。

  進行方向→
─┬───┬─
 │@ C│
 │A B│
 └───┘
 (通路側)

◆番外編---2階建て車は下階へ

 2階建ての列車が日本にはいくらか存在します。たいてい上階の席は、展望がよく人気が高いのが実状です。新幹線「Max」、東海道線「湘南ライナー」(一部)、中央線臨時快速「ビューやまなし」などの自由席に乗車する場合、途中駅から上階へ行っても空いていないことがあります。よって、初めから空席のある確率の高い下階へ行くことをお薦めします。まずドアが開くと、大体の乗客は上階に上がって行きますが、席がなく諦めて下階へ行くとすでに席が埋まってしまった…ということが少しは減るはずです。
 在来線の場合は、下階でも上階でも景色は見ることが出来ます。下階は、地面に近いために速度が速く感じられます。新幹線の場合は、防音壁しか下階では見られません。こちらの場合は、景色をとるか、座席をとるかの選択が必要になります。
 景色も座席も捨て難いという欲張りな方は、車端部の席を覗いてみましょう。車両に入り、階段を上り下りする前に、階段と反対側方向を見てみましょう。客室がある号車があります。しかし、この部分の座席なら、2階建て車を選ぶ意味がなくなってしまいますが…。






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