駅員が暴行事件に遭う理由

掲載日2007年11月19日

背景

 最近、駅員への暴行事件が増えているという。2006年で250人が負傷したという。特に年末年始の忘年会シーズン、金曜日の夜間に多いようである。駅などでもポスターを貼り、啓発運動に努めているようである。 参考資料

 もちろん、暴力事件がいい訳がない。駅員だけにクローズアップしているが、普通に見れば、傷害事件であり、通り魔のようでもある。


身近な例ですが

 私自身は面会したことはない相手だが、とあるインターネットの掲示板上で、JR社員らしき人(知人がそのように紹介しているので、JRの社員だとして話を進めます)から、「このJRの切符でこうすることは出来ますか」という質問に対しての説明を受けた。具体的な内容は省略するが、結果としては、専門用語を多用して全否定の上“普通のきっぷを買え”という答え。そしてその書き込みの最後に、「そちらの要望出してみてはいかがでしょう?といっても、きっと取り合ってくれないと思いますが。。。」(原文ママ)、と言う捨て台詞まで書き込まれていた。その掲示板上でのハンドルネームが「鉄道Gメン」だったが、Gメン=特別捜査官、というニュアンスで使っているのだろうが、実際にそんな役職があるわけでもないのに、自らを「Gメン」と名乗るというのも、自惚れにも程がある。

 この掲示板の場合は、会社 対 客とのオフィシャルなものではなく、仲間うちに近いものなので、本音に近い説明だったのかもしれないが、直接面会したことのない相手(私は、「鉄道Gメン」が、どういう人なのかは分かりません)に、気を遣わない・本音の説明をすると言うことは、きっと、実際の現場でも、気を遣わない説明・応対をしているのだろう、と予想できる。
 それにしても、“取り合ってくれないと思う”という捨て台詞は、質問に該当するJRの会社と、「鉄道Gメン」の勤めるJRの会社は違うにしても、同じJRグループの割には無責任である。しかも、質問の内容は東海道新幹線で、「鉄道Gメン」が勤務するのは、山陽新幹線を扱うJR西日本とのことである。


鉄道マンの行動・考え方

 それでは、暴行事件と、駅員による気を遣わない説明、どのような関係があるのだろうか。
 上記の説明文を見て…“この「鉄道Gメン」は、酔っぱらい客に対して、自分の正当性を主張するあまりに、暴行に遭遇しそうだなぁ”…という印象を持った。

 言いたいことは同じでも、相手が納得するか、気分を害するかは、文面・話し方によっても左右される。もしかしたら、その「鉄道Gメン」自身の説明で、過去に、相手が気分を害し、クレームが起こるか、無駄な交渉が起こるか、嫌みの一言でも言われたこともあったかもなぁ…と(実際にそういうことがあると、「鉄道Gメン」自身は余計、気分を害させる説明をし出すようになるかもしれない)。しかも、見出しの暴行事件の場合、相手は酔っぱらいであることが多く、何時爆発するかが分からない。その相手に対して、気を遣わない説明をすれば、相手は更に気分を悪くし、ブレーキがきかずに、暴行に至る可能性も十分にある。酔っぱらい相手には、一段と気をつけて応対しないといけない。
 しかし、そもそも、気をつけている駅員は、どのくらいの割合でいるのだろうか。この世の駅員という人たちは全員、自分の正義だけを信じて、特に相手に気を遣うような説明はしないのだろうか。


鉄道会社としての責任

 なぜ、客は駅員に問い合わせをするのかというと、「こうして欲しい」という要望があるからで、何か不満があるわけである。問題がなければ、わざわざ駅員に問い合わせることはなく、自動券売機や自動改札機が普及している今、駅員と接することなく列車に乗ることも出来る。また、駅員を暴行する客の例でも、わざわざ、100メートル先にいる駅員をいきなり殴りかかることはないだろう…と思う(何かやり取りしていて、事件が起こったのではないか、ということである)。
 その、客のリクエストを、相手の気持ちも考えずに真っ向から否定し、その「鉄道Gメン」の場合は最後に捨て台詞である。第一に「否定」ありきで向かってくることにも問題がないわけではない(火に油になることもあり得る)。

 これは、社員教育にもつながってくると思う。“客からの問い合わせで、こういう風な接し方をしないと、クレームに発展する”…という話はしないのだろうか。それとも、“最初に否定しましょう。そして、最後には捨て台詞を申し上げ、お客様にとどめを刺しましょう”、と言うマニュアルが存在するのだろうか。もし、こういうマニュアルが存在し、結果、暴行事件が起きた場合、それはその会社の自業自得である。たとえ、その要求が、その駅員にとって理不尽だと思ったとしても、それをいかになだめるか、説明をするかが重要である。
 例えばマナー講座などで、受講生が間違った仕草をした場合、もちろん講師はそれを認めることはしないが、うまい具合に、正しい方法を教えるものである。講師は否定することはない。JR社員の場合、というより特に「鉄道Gメン」の場合は、これと正反対なことを行っているのである。

 もちろん、人間=性格が違うわけで、JR社員の全員が全員、このような自分の考えだけを押し通そうとする性格の集まりではないだろうと信じたいが(自主的に、やんわりとなだめられる人がいるかもしれない)、昔のJR職員の様子を思い出したり、その「鉄道Gメン」の書き込みを見ると、全員が全員、そう言う堅物の寄せ集まりだと思ってしまう。また、会社全体で統制を取らないというのは、これは非常に残念な話である。


最終的に被害を受けるのは駅員

 つまり、現場社員への危機管理である。駅員自身が自ら防御し、それを会社としてもマニュアルなどでサポートするのが理想に思える。それにも拘わらず、現在の鉄道会社は、いかにして被害に遭わないかを考えずに、ただ被害者ぶっているだけのように見える。それどころか、あえて喧嘩を売るJRの駅員も最近(2011年現在)は見かけるが…。もし、防御しているのにも拘わらず減らないとしたら、年々、客側の絡み方が巧妙になっておりJR側が追いつけていないのか、もしくは防御方法が間違いなのである。
 「信号が青だから俺たちが正しい」と、横断歩道を歩いていたら、信号無視した自動車にはねられて死んだ…と言うことと同じである。いくら自分が正しくても、周りの様子を見ないと、結果、自分が被害を被ることになる。
 JRは大きな会社であり、有能な弁護士に依頼して裁判を起こせば、きっと負けることはないだろう。しかし、そのためにエネルギーを注ぐことになり、費用がかかり、それ以前に駅員は負傷している。そうならないための「逃げ」を考えることも、必要なのではないか。




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「鉄道Gメン」と思われる人物のブログ「Let's take a journey」・JR西日本の兵庫県の駅の駅員(当時)のようです