世間から取り残る鉄道と旅行会社

〜旅行会社自らが推し薦める「旅行離れ」〜

掲載日2010年12月04日
 ここ最近行くようになった旅行会社(kntツーリスト)に先日行くと、ドア付近に、“2011年1月から、JR券や航空券の事前受付はしません”旨の張り紙があった。
 航空券はインターネット発注がポピュラーのため、ここでは置いておいて、JRの切符は1ヶ月前の10時に発売するが、旅行会社では、(1ヶ月以上前)事前に予約を預かり、発売開始直後に発券したり、お店に向かわずに事前にFAXで発注するサービスをしているが、そういうサービスをやめるというのである。かなり前だが、びゅうプラザの例を、この批評文のコーナーでも取り上げた。その後、多くの旅行会社で、このような申込方法が出来なくなる旅行会社が増えてきた。
 以前、JTB渋谷支店(当時から場所は移転)で、FAXで申し込んだ後に、今まではあった返答が暫く経っても来ないため、聞いてみたところ、そういう申し込みはやらなくなったという返答があった。FAXを送った直後に言ってきたのならまだしも、こちらから問い合わせするまで返事が無く、つまり放置されたということである。連絡すらよこさないその旅行会社が、今は私たちのCS宣言!とぬけぬけと書いているのだから、JTB渋谷支店には見ていて呆れる(まぁ、上記のFAXの件は、5年以上前の話ではありますが…5年経っても相変わらずその程度というわけである)。この「CS」が、一般的に言う顧客満足のCSではなく、JTB社員の自己満足とか、客なんてどうでもいいというような別の意味だったり、毎月数百万円以上の取引がないと客と呼ばないというのであれば、ここ周辺の文章は削除させていただきますが。
 事前に申し込みや遠隔地からの申し込みが出来なくなると言うことは、つまり、旅行会社様のご都合に合わせて、店頭に向かって、対面で購入するしかできなくなると言うことである。化粧品と勘違いしているのか?それとも役所気取りか?その一方で、閉鎖したり営業時間を短縮する店舗も多く、そう簡単に旅行会社に行きづらくなってきている。24時間開いている旅行会社など聞いたことがない。また、すぐに満席になる列車に乗りたいために、夜のうちに自宅でFAXで申し込んでおき、取れた後、会社帰りに取りに行く、と言うようなことも出来なくなる。
 ちなみに、FAX注文のメリットは、客にもあるが店員にもある。この先、FAX注文が不可能な場合、店員に対して、高度な操作スキルが求められることになる。FAX注文が不可能になると、目の前で、右往左往、ノロノロ操作している光景を、必ず客に見られるわけである。この先、従来以上にスムーズに発券できることが要求されるわけである。

 その旅行会社(knt)の人間に聞くと、kntツーリスト全社的にそうなるようだ。

 一方、旅行会社など当てにしないとすると、インターネットでの発注がある。上記でも書いたが、航空券の場合は、今となってはインターネットを使う方がポピュラーだろう。また、航空会社へ電話しても予約できる。しかし、JRのインターネット予約は、出来なくはないものの、色々な制限や条件を設けている。私自身はインターネットでJR券を手配したことがないので詳しい事情は分からないが、全列車・全区間が手配できるわけでもなく、寝台列車などの個室は全く手配ができない。また、JR全社で統一されているわけではないため、全社毎に、操作も違えば(ホテル利用時とは違い、利用そのものには連絡する必要がない)個人情報の登録なども必要になっているだろう。
 航空券など、一般的なインターネット予約のメリットは「気軽さ」であるが、気軽に出来ないのがJRのインターネット予約なのである。

 このサービス悪化の背景には、景気・売上の問題も大きいだろうが、予約はしているが、取りに来ない客もいるからと言う理由もあるかもしれない。しかし、そこで出てくるのが個人情報の登録である。旅行会社一社に、個人情報を登録することで、後はやってくれるのならば、別に私自身は気にならない(インターネット予約のような、この切符は手配不可、と言うことも少ない)。日常の商売(法人 対 法人の話ですが)と同じ事である。


 旅行会社は、(基本はエコノミークラス/普通席利用の)パックツアー系統はアピールしているが、このような基本中の基本をおろそかにするという愚行ぶりである。パックツアーよりもJR券単体だと手数料収入の利幅が薄いからだという問題だろうが、結局それは、売るつもりがないのかという意識満々のJRの責任でもある。


 よく、「若者の旅行離れ」などのような話があるが、その件に限らず、そういう理由を作っているのは自分自身(JRや旅行会社)なのにも拘わらず、自分達で機会を失わせて、“旅行に行く人が少なくなった”と主張するのは虫が良すぎる。切符の手配のために会社を休めとでも言うのだろうか(そりゃあ、JRや旅行会社の人たちは、同業者のためにはいくらでも休めるのかもしれませんが)。そんな横柄な態度だから旅行に行く人が減る中で、さらに旅行会社に行く人も減って、インターネットに流れることくらい、分からないのだろうか。それとも、数百円程度の細々した手数料収入なんていらないくらい、儲かって仕方がないのだろうか。
 私の知っている限りびゅうプラザから始まったサービスの改悪、誰の仕業だろうか。JRの圧力だろうか、旅行会社との連帯責任だろうか。
 どんなに鉄道は環境がいい云々アピールしても、切符すら満足に買えないがために、利用者がいなければ列車そのものが無駄である(空気輸送の分、環境に対して良いはずがない)。

 話はkntツーリストに戻るが、この件とほぼ同時期に、航空券や私鉄、路線バスのなどの数多くの交通機関の手配に対しても、「旅行業務取扱料金」を取るようにしたようである(JTBでは、確か高速バスなどについては取ると記憶している)。色々見ていると、店舗により額が異なる。何でもかんでも手数料を取る会社は、何となく、経営的に末期のような気がするが、どうだろうか。旅行会社が倒産すると、パックツアーの場合、空港に行っても飛行機に乗れない可能性があるようだが…。

11/05/08 見出しなどを若干変えました




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