モバギユーザーによるGPD Pocket2の感想

 中国大陸のGPDというメーカーから、「GPD Pocket2(以下 GP2)」という、新たなモバイル端末が出た。ウルトラモバイルPC(以下 UMPC)というくくりの、大変小さな端末である。
 モバイルギアは1990年代に出たPDAと呼ばれる小さなコンピューターのことで、20年近く経った現在でも私は現役で使っているが、その私がGP2を使った感想を書いていく。
 ※ここでいう「モバイルギア=モバギ」は、モバイルギア2のことをさします。


LTNの顛末

 小型端末というとNECのLife Touch NOTE(以下 LTN)を思い浮かぶ人もごく僅かにいらっしゃるかも知れないが、私も買った。ちなみに発売日は、東日本大震災の1〜2日前だった記憶がある。
 私にとって旅行で持ち歩く際に欲しいソフト(特にワープロを筆頭にしたソフト)が入っておらず、その頃はまだ、通信手段は無線インターネット(Wi-fi)しかなく(※機種に寄るようです)、当時は今よりはWi-fiが普及していないこともありメールの送受信も不得意。外に持ち出したのは試験的に1〜2回と全く役に立たず、結局、自宅のトイレでメールを読みたいときなど、自室を離れるときに持っていく程度だった。やがて、数年前から使えなくなり、現在は電源すら入れていない、と言うよりも、入れられなくなった。
 というのも、電源のケーブルが断線してしまい、ACアダプターをプラグに挿しLTNを繋ぐと、煙と火花のようなものが…!!この頃にはもうACアダプタは製造しておらず入手不可(汎用品や中古品など、探せば代替品はあるでしょうが、本格的に力を入れてまで欲しいかというほどでもなく…)。ゴツい割には繊細だったというオチである。
 NECとしても、発売前は「モバイルギアの再来」なんてもてはやされた代物だったが、後継機種を出さず、今となってはきっと黒歴史の一つになってしまったようだ。
 一方、メモ専用端末のポメラ(キングジム)は、その後も新商品を出し続けている。小型で文書を入力できる需要はなくはないはずだ(DM100を購入し、現在も使っています)。

 そんな一方、旅行先ではモバイルギアでメールを送受信しているが、その時に使っているPHSが2020年7月に使えなくなったり、WindowsCE機だと有線LANが使えないホテルもあるなどの理由で、UMPCそのものは最近出来た商品群ではないが、試しに(と言っても8万円台ですが…)買ってみることにした。
 以下、他の記事などで検索すると分かる内容ではあるが、モバイルギア(現役)ユーザーでの視点として、大きく気になったことを書いていく。



買って良かったこと

Android端末ではない

 LTNと比較して、これが一番大きい。パソコンとして使うには、(あくまで移動電話用のOSである)Androidは酷かった。GP2はWindowsマシンなので、普段使っているソフトをGP2にも入れ、無線LAN(本体に装備)で別のWindowsパソコン(共有フォルダ)のデータを読み込むことも出来る。
 モバイルギアのOSはWindowsCEという、巷のパソコンとは違うOSだ。モバイルギア=WindowsCEと比べると、巷のパソコンと同じソフトが入れられるが、サスペンド(スリープ)からの復帰にホンの少し時間が掛かる。普通のパソコンのOSだから仕方ないが、WindowsCEの瞬発力は凄かった。

小さすぎ

 実際に買ってみて、確かに小さい。普通、ノートパソコンを片手で持つ場合、親指で上面、残りの指で底面を持つと思うが、GP2は携帯電話などを持つように、上から鷲掴みすることができる。
 筐体はアルミなので、丈夫そうでしかもダサくはない。購入前にインターネットで感想を調べてみると、今その人が使っているマシンよりも高性能なので、GP2にディスプレイやキーボードを接続してメインマシンとして使っているという人もいるようである。
 ただ、よくよく考えてみると、タブレットやスマートフォンも、今のパソコンと同等の性能を持っているようだが、スマートフォンからカメラや通話機能を外し、キーボードを接続したものだと考えると、それほどびっくりするものでもないのかも知れない。
 そしてディスプレイだが、こんなに小さいのに精細に表示されていて、モバイルギアとは隔世の感があった。結果、操作しやすい/しづらいはあるのだが、動画など、画質が関わるものでもきれいに見える。そして音声は、モノラルだがスピーカーが下面にある。比較的大きな音が出せるので、音質にこだわらなければ、旅行先のホテルでBGMくらいに音楽を聴く分には十分である。
 大きい・小さいでいえば、LTNのページには、ACアダプタが大きすぎると書いたが、こちらは(スマートフォン利用を筆頭に開発されたであろう)USB電源なので、相応のサイズである。

指先用のマウスがある

 基本的にはタッチパネルがあるが、細かいボタンを押すとずれるものだ(しかも精細な表示をするし…)。その一方、[DEL]キーの真上に、1cm四方程度だが、小さなトラックパッド(タッチパッドと言うそうですが)がある。そのパッドを押せばマウスのボタンと同じ機能を果たすが、タッチパッドの逆側([ESC]キーの上)に、左右のマウスボタンがそれぞれ用意されている。基本はパネルを押すが、反応がいまいちなときはタッチパッドと左右のボタンと使い分けている。
 マウスの列には他にも、ファン停止・音量・明るさ調整・電源のボタンがあり、これらはかなり便利だ。


買って良くなかったこと

 今までUMPCを買わなかった理由の一部がそのまま当てはまるように思える。もちろん、この文書はGPD2で作成していない。
 まずは、ヒンジが堅い割りにつまむ部分がないので、画面が開きづらい。特に乾燥している今(3月頃)は滑ってしまう。個体差か、時間が経てば柔らかくなるかもしれない。

小さすぎ

 小型化最優先というのは良かったことでも書いたが、デメリット側でも作用する。
 一番大きな点はキーボードの配列だ。後述の表示面とは別に、QWERTY配列なのは確かだが、それはあくまで代表的なアルファベットのみ。パソコンを操作する際、アルファベット以外の文字も使うものだが、このキーの隣にはこのキーがあるというような手癖が効かない。
 日本ではなく中国大陸のメーカーが製造したことは上でも書いたが、本体の裏側や説明書に中国大陸の文字(簡字体)が記されていて(ちょっと引いたのは正直なところ…)日本向けにカスタマイズされているわけではないようだ。その結果、キーボードが日本向けに最適化されておらず、スペースキーの左右にある[XFER(変換)][NFER(無変換)]キーがなく、代わりになりそうな場所もない。[TAB]キーを押すつもりで左端のキーを押したら[Q]だったり、全角文字を入力した直後に半角で入力するとき、スペースキー右の[XFER]を押すつもりが、[;(セミコロン)]ボタンが割り当てられるなど、意図しない文字が入力されてしまう。結局手癖が効かないので、モバイルギアの代わりにはならないので、旅行にはモバイルギアとGP2の2台を持っていくことになりそうである。


 上はモバイルギア(MC-R520)、下はGP2である。
 それぞれのQとLの位置を見比べると分かるように、実は、モバイルギアよりGP2の方が、文字キーの横幅が長い(Qの位置は両方とも同じ一方、Lの位置が、GP2の方が少し右寄りです)。なので、「こ(KO)」を入れるつもりが「じ(JI)」が入力されるようなズレが生じることがある。だったらこの幅をちょっと短くして、普通のパソコンの形状に近づければいいのに…と思う。

 もう一つ小さすぎて困ったことは、SDカードが挿せないことだ。旅行時にはデジカメも持っていくが、デジカメの記録媒体はSDカードだ。microSDカードであればそのまま挿せるが、デジカメなどの周辺もそれに合わせるのはなんかおかしい。もうちょっと大きくして、SDカードを読み込めればいいのに…と思う。大は小を兼ねるが、小は大を兼ねない。
 結局、一番上の写真右側の黒い箱のもの(センチュリー社製・Terminal C Light)を購入した。USBハブ・有線LAN・SDカードの機能があり、しかも、電源・この装置・GP2という繋ぎ方が出来る。購入した秋葉原でお店の方によれば、相性があるとのことだったが、SDカードと有線LANは問題なく使え、便利と言えば便利だが(USBについては繋げる機会がないので検証していません)、出先でSDカードを読む機会がありそうな場合はこれも持って行かねばならず、せっかくの小さなマシンが台無しである。

Windows10

 Androidではなかったのはよいのだが、それでも、UIが分かりづらいということでおなじみのWindows10だ。キー配列については、ハード的に手癖が効かないが、こちらはソフト的に手癖が効かない。細かい部分で、Windowsよりも、Androidの方が近い部分もある。Windows8の操作感は使えたものではないが、Windows10も同じようなものだ。精細な表示が出来るとはいえ、画面が小さいので、設定したい部分などがつかみづらい。

ボタンの表示と違う

 普通ならば、カンマ(,)を入力したければ、キーボードにある「,」ボタンを押せば表示されるはずだ。ところが、違う。

 以下はキーの表示と実際の表示の違いの一覧である。
(1)キートップの表示 ! F1
 1 
@ F2
 2 
# F3
 3 
$ F4
 4 
% F5
 5 
^ F6
 6 
& F7
 7 
* F8
 8 
( F9
 9 
) F10
 0 
_ F11
- 
+ F12
= 
(2-1)実際の表示(SHIFTなし) 1234567890-^
(2-2)実際の表示(SHIFTあり) !"#$%&'() =~
(3)モバイルギアの場合(SHIFTあり) !"#$%&'() =^
 (1)はキートップに表示されている文字、(2)は実際に入力するときに表示される文字、(3)は参考としてモバイルギア(等の普通のキーボード)だ。

 このような違いは、他のキーにも起こる。こうなってしまった理由が、「日本語キーボード(106/109キー)」を選択したからで、ハードウェアキーボードレイアウトの設定画面で「英語キーボード(101/102キー)」にすることで、キートップの表示通りの入力が出来た。
 そういえば初期設定の時にキーボードの種類を選んだような気がするが、英語キーボードに選択してくれっていう説明書きってあったかな(そもそもまともな説明書はなかった)と思い、説明書類を片っ端…と言っても紙切れ2枚ですが…から調べていくと、関係なければ見ないような場所に書いてあった。この辺りが中国メーカーなのかなもしれない。ちなみに、キートップにカナは表示されておらず、オプション(ジャストシステムで購入した場合)でシールがついてきたのだが、実はこの、オプション用の説明用紙に、英語キーボードの説明があった。私自身はカナ入力はしないので、スルーしていたが、まさかここに書いてあったとは。
 ここからは再度、Windows10がいかに利用者のことを考えていないOSかを書いていくが、キーボードの設定画面で[今すぐ再起動する]ボタンを押すと、作成中の文書があっても保存を確認することなく強制的に再起動する。ただ、これはまだマシで、あくまで利用者がボタンを押すことでそうなるが、何かアップデートがあり、再起動する必要があると、これも同じく保存を確認せずに再起動する。例えば、文書を保存せずに暫く放置し、そうこうしているうちに自動で(=勝手に)アップデートがあると、気付いたら文書が消えているわけだ。実害はなかったが、再起動後にメールソフトを開くと“異常終了した可能性がある(ので復旧するか?)”というメッセージが出た。ちょっとしたテロ行為だと思うが、勝手なアップデートはGP2にインストールされているWindows10 Homeの場合は解除できない。Windows10って、そういう仕様なんですか...。
 具体的なキーの続きで、ATOKを使う者ならば、[f・10]キーで、記号を表示させることもあるかと思うが、それが効かない…と思ったら、ATOKの設定だった。最近のATOKって標準では使わせないのか…。


Willcom(現・Y!モバイル)WX320Kと接続(人柱の報告)

 上記で、モバイルギアのお供に使っているPHSが2020年7月に無くなると書いたが、それまでは、繋げるものであれば繋げておきたい。
 ところが、WX320Kの、Windowsパソコン用のドライバは32ビットOSのみ。GP2はWindows10=64ビットOS。32bit用でも使える可能性はあるようだが、その一方で、WX330Kには、64ビットOS用のドライバが用意されていて、WX320Kでも使えるというWebページを発見。機種も、対象OSも違うという中で、人柱になってみた。
 結果は、64kPIAFSであれば問題なく通信が出来た。速度としては決して早くはないが、テキストがベースのメールの送受信ならば気にするほどでもない。


総評

 良かったことより、良くなかったことの方が多いのは確かである。その点モバイルギアはその辺りでバランスの取れた、計算し尽くされたマシンなんだなぁ。ただ、これらUMPCの出荷が増えて=需要があれば、日本のメーカーも開発してくれるのではないか、ということに期待する。
 まぁ、こういう小さな機械って、嫌いじゃあないんだけどね…。




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