モバギユーザーによるLifeTouch NOTEの感想

 NECから、「LifeTouchNOTE(以下LTN)」という、新たなモバイル端末が出た。現代版のモバイルギア(=モバギ)を作ったらこうなる、と言う製品とのことである。そのため、普通のパソコンを意識したキーボードの配列や、サイズなど、モバイルギアをかなり意識した品物のようである。
 一方私は、モバイルギアは、パソコンのアシスタントとして、10年以上前から主に旅先で使っている。最近は、有線LANでもインターネットにつながらないホテルがあったり、ブラウザも仕様が古く、表示できないページがあったりと、不便に思っていた頃(修理の件は、修理専門業者に依頼することで治りました)、このLTNが発売、半分興味本位で比較的すぐに買った。

 …しかし、モバイルギアを使っていて、これに切替(買い足し)しようとする人へは、元々のモバイルギアの使い方にもよるだろうが、これはおすすめしない。Androidという移動電話向けOSの仕業なのか分からないが、このOSはパソコンのアシスタント機用のOSにはふさわしくない。ただ単に、移動電話にキーボードが付いただけのようなマシンである(一応、NECとしてはキーボードと移動電話向けOSとの親和性を高めたつもりらしいが、甘かった・ちなみに、LTNでは通話は出来ないようです)。
 モバイルギアは、当時実売8〜9万円だった記憶がある一方、LTNは4万円程度で、2倍以上の差がある。当時のコンピューター普及率や、物価の上下などと比べると直接の比較は出来ないが、この値段の差が、開発に予算を掛けた(=気を遣った)差なのだろうか…。

 購入してからまだ数日しか経っていないものの、モバイルギアとの比較をメインに、数日の時点の感想を掲載していきます(日が経てば、もっと別の感想が出ると思いますが、その時は適宜UPしたいと思います)。良い部分は、ITサイトなど各種レビュー文をご参照いただくとして、モバイルギアユーザーから見た、主に違和感のある部分を掲載します。中には、複数の指を使って画面表示を変更できるという“マルチタップ”が出来ないなどへの不満もあるようですが、モバイルギアに元々なかった機能への、また移動電話特有の機能については、よく分からないので書けません。
 この文では、モバイルギアはMC-R520(ATOK Pocketインストール)、LifeTouch NOTEはLT-NA75W1ABを指します。

11/07/18 追記した部分は、文頭に(追記-1)として追記しました

 今まで、キーボード付の移動電話は色々あったが、パソコンのそれと比べると、配列が大きく異なり、キーのサイズも小さい。一方、小型パソコンにしても、キー配列が微妙だったり、電源や電池の持ち時間などのパソコンの弱点があり、私の欲しいという条件に合わなかったが、それに対してLTNは、ほぼパソコンと同じキー配列で瞬時起動という。PC-98ユーザーにとって使いやすいキーマップの変更が出来るという話もあり、発売前にLTNを紹介した記事にも「モバイルギア(の復活、と言うニュアンス)」という言葉を含めて紹介されており、「これは来たか?」と言う期待値は非常に高かった。


小型のコンピューターの中では、キーボードの配列は、完璧なJIS配列に近いです(“近い”と書いた時点で、完璧ではありません)

天板には指紋べったり

 LTNの天板(表面)はつややかで、きれいである。一方モバイルギアは若干ざらざらした、灰色の表面である(機種による)。
 見た目はLTNの方が、丸みを帯びていて断然いい。しかしそれは、素手で触っていないときの話である。画面を開くときには、当然天板にも触れるが、そうなると、徐々に指紋の跡が残る。画面を開くために天板を触れるのは、モバイルギアも同じだが、モバイルギアの場合は気にならない、つまり、目立たない。LTNは見た目重視と言うことになるわけである。骨董品を鑑定するときに使うような手袋をはめて使えとでも言うのだろうか。


品のないACアダプタと、か弱いタッチペン

 モバイルギアも、LTNも、ACアダプタを使って電源を取るが、そのACアダプタも、大きく違う。モバイルギア用のACアダプタは、モバイルギアと同様小型である(プラグと変圧部分が一体型なので、一部のコンセントには挿しづらいのは確かですが)。一方LTN用は、パソコン用と同じくらいの大きさである。つまり、ごつい。小型のコンピューター用のACアダプタとしては、品のないサイズである。モバイルギア同様、長時間動くとはいえ、宿泊する旅行の際は、ACアダプタは持参しないと心許ないが、そのときに持ってくるACアダプタがごついのは、せっかくの小型マシンが台無しである。
 モバイルギアもLTNも、液晶がタッチパネル対応で、ペン状のものを使って細かい部分をタッチ入力することが出来る。モバイルギアの場合はスライタスペン、LTNはタッチペンと呼ぶ。構造としては、どちらもプラスチックの棒ではあるが、長さが、モバイルギアは本物のペンのような120mm程度に対して、LTNはつまようじを少し長くしたような85mm。また、収納する場所も違いがある。モバイルギアは液晶画面の真下にあり、使用中でも引き出すことが出来る一方、LTNは筐体の下の方にある。つまり、本体を一度持ち上げないと出せない。そもそも、画面をタッチするには指でも使えるので、必ずしも必要ではないが、気遣いというか、こういうところも細かく差が出ている。


初期の段階

 説明書が薄く、その内容も簡単だった。一方、説明書PDFファイルなどを備えたCD-ROMなども入っておらず…どうなのだろうか。
 また、買った直後に、アプリケーションをアップデートする必要があるが(これはパソコンでも同じなので何とも思わないが、問題は)、このとき、事前にGoogleに情報を登録し、IDをもらわないとアップデートできない。Googleというのは、この機種のOSの会社でもあるが、基本は検索サイトの運営会社である。ニュースによれば、Androidマシンを持ち歩いた情報を、Google側で記録していたという。名前などの個人情報、検索した結果、何処に行ったか等々を記録される可能性もある(もちろん、自宅も登録しているだろう)。ストーカーもびっくりだ。
 正直、何故、検索サイトの会社に個人情報を登録しないといけないのだろうか、胡散臭い。そして、初期設定でも「無線LAN」がないとただの箱になってしまい、何も設定すら出来ない。「とりあえず使ってみよう」というようなこともできない。


旅行や、移動しながらの利用を想定していない?

 上記でも書いたが、常時、無線LANの利用が大前提のようである。また、無線LAN以外の通信方法での動作を、基本的に想定していないようである。しかし、無線LANが使える交通機関はまだまだ少ない。また、ファストフード店やコーヒーショップでは普及しつつあるが、田舎の温泉場などでは無理だろう。しかもその都度無線を探して、設定しなければならない。一方、モデルによっては無線LAN以外の方法で通信できるようだが、これはNTT限定のようである。このために電話回線をもう一本契約したくはない。私の場合、家族が無線LANの環境を整えていたので、自宅では特に問題なくすんなりと設定が出来たが、もし無線LANの環境がなかったら、それらの機器を買い足ししないといけなかったろうし、面倒くさかったはずである(箱を開けても使えるまで、数日単位で掛かった可能性がある)。結局、まともに使えているのは自宅内のみである。外出先に持って行っても、今の所ほとんど使い物にならない。
 ちなみに、モバイルギアは、試作機を新幹線に持って行って、使い心地を試したという。持ち歩くためのことを考えたコンピューターなのである。


キー入力・画面の動き方

 (追記-1)右の[SHIFT]キーがなく、紛らわしいという話は、色々なところで聞くが、更に紛らわしくさせる状況として、[ESC]や[TAB]などの文字以外のキーが黒で、[Q/た]等々の文字のキーが灰色ならいいのだが、キーが全キーとも真っ黒なのである。右[SHIFT]の不在を更に気付きにくくさせている。

 厄介なのが、Windowsではない言うことである(まぁ…最近の新しいWindowsも、今までの操作感覚を踏襲していないようですが…)。つまり、パソコンと操作については同じ部分はいくつかあっても互換性がないと言うことである。例えば、設定をキャンセルしようと[ESC]キーを押しても反応しなかったり、設定の項目を移動しようと[TAB]キーを押すと入力した文字の横にスペースが出来たりと、手癖が効かないことである。こういうのは特にイライラする。上の方に、キーマップの変更が出来ると書いたが、Windowsと操作が違えば、結局は意味がないことである。操作以外にも、アプリケーションの起動や管理も独特で、「アプリケーションの終了」という概念がない。つまり、起動すれば起動するだけメモリを消費する一方ではないか。一応、終了は出来るには出来るが、設定画面を開き、「強制停止(=強制終了)」させるという、何とも遠回りなやり方である。
 一方、その割には、アプリケーションの切り替えが(Windows風に言えば、タスクバーにあるアプリケーションを切り替える)できないようだ。ソフトを常駐させている、と言う概念のようだ。実際のところ、タスクバーのように、アプリケーションを切り替える機能があったら、項目がたまり放題になるからだろうが…。(追記-1)アプリケーションの切り替えは、出来なくはないようだが、住宅のマークのボタンを長押しする必要があり、頻繁に切り替えすることは想定していないようだ。

 そして個人的な話だが、基本、文字を入力するときは、大文字で入力する=CAPSロックが常に掛かっている状態だ。パスワードを入力するときも、大文字の状態ありきである。例えば、「ABCdef」と言うパスワードを打つときは、ABC→[SHIFT]を押しながらDEF…という流れである(もしくは、ABC→CAPSロックを解除してdef)。しかしこのLTN、CAPSロックという概念がないようである。最初の1文字だけだけロックがかかるが、2文字目からは小文字に戻ってしまう([SHIFT]を押しながらABCを入力する以外に方法がない)。

 キー入力と言えば、かな漢字変換システムとして、ATOKが搭載されているが、ATOK Pocket(モバイルギアなどWindowsCE用のATOK)や、パソコン版では当たり前の機能が備えられていない。候補の表示も違和感がある。半角や全角の変換はもちろん、手書きや文字コードなどを使っての漢字の検索も出来ない(※モバイルギアの場合は、OS側に機能があった)。そして、記号の入力が出来ない(“きごう”と入れて[SHIFT]+[f6]や、[f10]を押したりしての記号一覧が出ない)。単なる変換効率がよいだけのかな漢字変換システム、と言うだけである。これでは、移動電話のそれと変わりない。ちなみに、キーの打ち心地や、ATOKそのものの細かい変換効率はどうかと聞かれても、キーボードやATOKを駆使できる文章が打てないので(下方参照)、コメントは差し控えたい(と言うより、差し控えざるを得ない)。
 (追記-1)その後、文章ではないが、色々ATOKを使ってみたところ、候補の表示が違和感がある他に、ポメラのページに記載したものと同じ、数字で選択できない。しかも、移動電話特有の、推測変換まで付いてしまっている(設定で推測しないようにすることも出来る)。例えば、その推測をしない状態で、「機体」を入れようと、「きたい」と入力→変換すると、画面の一番下に…
期待 機体 気体 希代 奇態 危殆 鍛 たい
…と表示され、スペースキーを、該当する候補まで押し続けるか、その漢字をタッチする。また、上図の通り、横に広がっていくので、文字数が多ければ、その分、一回に表示される候補の数が減らされていく。そしてもし、推測変換をする状態だと、「期待感」など、余計な言葉が付いてくる(そのため、『機体』にたどり着くまでもっと時間が掛かる)。スペースキーを回数分押したり、クリックのように漢字を選択する方法は、初心者のやることであるように思えるが、開発した人たちは、開発しきれなかったのか、それとも、キーボードをあまり使わない人たちなのだろうか。

 ブラウザの動き方も、パソコン寄りではなく、移動電話寄りである。下方面にスクロールするとき、パソコンの場合は、マウスで、右の方のバーを下方面にドラッグするが、このLTNや移動電話(と言うよりも、スマートフォンと限定した方がいいかもしれない)の場合は、逆に上方面にドラッグする必要がある。上下の矢印キーでも画面を上下することが出来るが、押した分だけ等間隔に上下するパソコンと違い、LTNはリンク先に飛んで移動する感覚である。これも移動電話と同じだ。


(追記-1)表示が大きすぎる

 例えば、ブックマークや、ブラウザのフォーム画面(都道府県を選択する時など)で選択するときなど、項目を選択するときに表示する画面である。WindowsCEと言うよりもWindowsなら、画面の一部だけを占めるが、LTNはほぼ全画面に表示されて、文字が大きい。しかも、表示される項目数も少なく、(操作するときに上下があべこべの)スクロールを何度もしなければならない。1つの画面に表示される行数は、ブックマークの場合6行、フォーム画面は5行しか表示されない。年輩者向けの電話機のようだ。大抵、都道府県を選択する際、鹿児島県や沖縄県は下方にあるが、そこに行き着くまで、相当数、画面を払わないといけない。電話機の小さな画面ならば、この文字サイズで丁度いいのだろうが、あくまでLTNはモバイルギア=ハンドヘルドPCの後釜を目指している機械のはずである。これは逆に見づらい。


文字の編集

 もしかしたら、別途ワープロソフトがあり、入手すればいいのかもしれないのだが、そもそも論で、デフォルトの状態でテキスト入力+保存が出来ない端末というのは、パソコンのアシスタントという役割の端末としてはあり得ない。LTN専用のテキストのソフト(ライフノート)があるが、まずは上記「初期の段階」のように、自分の情報を登録した上でダウンロードしないといけない。しかも、このソフトは単純な文字入力だけで、太文字やフォントサイズを変える等の簡単な文字の編集すら出来ない。そして、メモリカードなどに「保存」という概念はなく、メール画面やブログやSNSに「送信」という概念である。「送信」という概念の場合、文章の追記や訂正が出来ない(差し替えということになる)。このサイトにも紹介していない通り、当サイト(もしくは私個人)では、ブログは開いていないので、無用の機能である。
 そのため、こういう文を作るために、試し打ちがてら打てないという、何のためにこの機械を買ったのだろう…と思う状態だった。


(追記-1)バックアップできない

 モバイルギアには、(WindowsCE全体ではなく)モバイルギア独自のアプリケーションがある。簡易的ではあるものの一太郎文章を表示したり、「MGメール」というメーラーなどもその一つだが、バックアップ/リストア機能がある。メモリカードを入れ、数回画面をタッチするだけで、インストールしたアプリケーションやメールやデスクトップ画面等々の設定、モバイルギアのRAM内に保存した文書など、一括でメモリカードに保存でき、もし故障したなどでデータが消えても、その時点のデータはすぐに復旧される。モバイルギアは移動しながらの利用が前提=それだけ故障する確率が高いので、非常に有り難い。しかし、このLTNにはそんなアプリケーションはない。上記の通り、作成した文章はあまり関係なさそうだが、ダウンロードしたアプリケーションやメールの設定が、保存できないわけである。アプリケーションを再インストールする場合、25万以上あると言われている中から探さないといけないのである。


「瞬時」ではない電源

 モバイルギアの大きな特色は、電源が瞬時に入/切でき、しかも電源を入れると、仕掛かった途中の部分から復帰できることである。LTNも、何だかワンテンポ遅いものの、電源を入れるとすぐに電源が切れたり、画面が付いたりし、まぁいらつくほどではない。しかし、これは「スリープモード」らしい。一方で完全に電源を入れる/切る場合(電源ボタンの長押し)、パソコンほどではないが、暫く待たされ、何か読み込んでいるんだなぁ、という間がある。電池の持ち時間が云々というのは、スリープモードで続けた上で使用した場合の数値なのだろうか。
 (追記-1)そのスリープ時、普通に動作しているときと同じように熱が出る。ということは、それなりに電気を消費していることが推測できる。逆を言えば、スリープ状態で長時間、そのままにすることは出来ない。飛行機に乗る場合、スリープ状態にして離着陸を迎えてはいけなさそうである。
 (追記-1)電源と言えば、長押しして電源を切るとき、移動電話のマナーモードのバイブレーションような、ブルブルという振動が一瞬起こるが、これは不気味である。通話機能がない→呼び出される必要がないのに、何故この装置があるのだろうか。そのスペースを、ステレオスピーカーなど、別の装置に替えて欲しいものである。


基本的には「おもちゃ」

 もし、この機種が満足的な出来であれば、こうならないように、将来に向けて複数台を買おうと思っていたが、そうする必要はないようだ。ただ、ポメラが予想よりも売れ、新しいモデルを出したように、このLTN、と言うか、小型のコンピューター・ハンドヘルドPCに需要がある(→この先も後継機種を出して欲しい)という理由で買ったというサインには気付いて欲しいものである。
 結局は、サイズとキーボードの配列だけモバイルギアに似ているが、それ以外は全く別物の、仕事で使えるようなコンピューターと言うよりも、玩具である。今までのモバイルギアにはなかった、地図など、外出時や旅行時に役立つ機能もあるかもしれないが、まだまだ発展途上であろう無線インターネットを使ってインターネットが出来て、メールを受信する程度であり、モバイルギアの代替機種としての役割はない。コンピューターと携帯電話の中間地点という話のようだが、電話の方に極めて近い(そもそもスマートフォンが操作体系からすると携帯電話寄りでしょう)。
 このサイトで使うための、客室や座席の感想や状況を記録するときは、モバイルギアを使ってその機内や車内で記録しているが、LTNがその役割を担うのは難しいだろう。まぁ、とは言っても、機内や車内で記録をする人は非常に少ないが、会議などでの議事録はどうだろう。モバイルギアを、マスコミの記者でも使っている人がいると言うが、記者会見の場などで、話を聞きながらこのような端末を使って文字を入力する人もいるかもしれない。そういう人たちが、このLTNを使うとどう感じるのだろうか。
 期待した分だけ、その落胆は大きい。どうやら、「モバイルギア」の名前を使おうかという話しもあったようだが、上記の通り「モバイルギア」とは似て非なるものである。





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