「西武 S-TRAIN」デビュー



 東横線では、電車やホームに表示する行き先「渋谷」が大幅に減った13年3月以降、品のない車両が来るようになったり、渋谷駅での乗換が不便になったり、その渋谷駅では今までは1本待てば座れた急行・特急列車に座れなくなったり、埼玉で起こった事故が横浜の方まで影響し遅延が多発するなど、「百害あって一利なし」と言っても過言ではない、副都心線(等)のへ相互直通運転が行われていますが、土休日限定とは言え唯一、利便性が高まるサービスが誕生します。17年3月25日(土)に、全席座席指定の列車「S-TRAIN」デビューです。タイトルに「西武」とあるのは、西武鉄道が導入する車両で、東横線に直通運転するためです。この「東急 特別席」コーナーでは、かなり前から、東急線で“お金を出せば必ず座席に座れるサービス”を要望していましたが、ここに来てようやく実現できることになります。
 東横線ユーザー目線で、気になったことを書いていきます。何も書いていないときは、東横線的な考え方で書いています。

この内容は、2017年01月のプレスリリースを元にした情報です。また、推測も書いています。実際の運行ダイヤなどは異なります。正式なダイヤなどについては、こちらのページ(西武 40000系(S-TRAIN))をご覧ください。

参考(20メートル車両10両編成の場合)
12345678910
自由自由自由自由自由自由自由自由自由自由
←渋谷      元町・中華街→
※9号車は弱冷房車。


資料

 プレスリリースで発表されている内容です。推測も含まれています。

<編成図>
12345678910
指定指定指定指定指定指定指定指定指定指定
車椅子 WC      
←渋谷       元町・中華街→

<シートマップ>

※乗降は一箇所のみ

<ダイヤ>
[下り] 元町・中華街方面


S

T
R
A
I
N
2
急行

17年
3月
S

T
R
A
I
N
4

特急

17年
3月
始発飯能
0918
小手
0904
秩父
1705
和光
1826
渋谷
中目黒
自由が丘
武蔵小杉
菊名
横浜
みなとみらい
元町・中華街
1015

1027


1046
1050
1053
1014
1018
1024
1030
1039
1045
1048
1053
1856

1906


1928
1933
1938
1854
1858
1903
1908
1915
1923
1927
1930
[上り] 渋谷方面


S

T
R
A
I
N
1
特急

17年
3月
S

T
R
A
I
N
3

急行

17年
3月
S

T
R
A
I
N
5

急行

17年
3月
元町・中華街
みなとみらい
横浜
菊名
武蔵小杉
自由が丘
中目黒
渋谷
0701
0704
0709


0727

0737
0705
0709
0713
0719
0727
0732
0737
0740
1655
1658
1702


1721

1732
1655
1700
1704
1710
1719
1716
1721
1725
1955
1959
2003


2022

2031
1956
2001
2004
2010
2020
2026
2033
2036
終着秩父
0915
小手
0841
飯能
1834
公園
1821
所沢
2111
和光
2117
※小手:小手指 秩父:西武秩父 和光:和光市 公園:石神井公園
※S-TRAINは全列車、下りは着時刻・上りは発時刻です。乗務員の交替がある下りの渋谷も着(=入線)時刻ですから、発時刻は1〜2分後だと推測されます。
※17年3月までの特急・急行は、S-TRAINが走る前の、時刻が近い列車で、終点以外は発時刻です。


<指定券料金(大人)>
 特急券ではないようです。
乗車エリア降車エリア金額
東横線・みなとみらい線内350円
東横線・みなとみらい線副都心線560円
東横線・みなとみらい線西武線(飯能まで)860円
東横線・みなとみらい線西武線(西武秩父まで)1,060円
※飛び込み乗車の場合は+200円。

座席について(東急初の座席料金)

 この車両(西武40000系)の座席は、クロスシートとロングシートに切り替えられます。S-TRAINとして走る際はクロスシートに、それ以外はロングシートになります。クロスシート利用時には、壁にあるコンセントが顔を出し、電源が使えるようになります。また、座席の背面部分にはカップホルダーとコートフックが付いています。
 S-TRAIN以外の時はロングシートとして走るので、この車両そのものは、平日も顔を出すかもしれません(その際、トイレは使えるかどうかは気になります)。


東急初のトイレ付車両

 今まで、デビューしたての伊豆急行のリゾート21(※クロスシート・トイレ付)が、東急線内を試運転がてら走らせたことはありました。あくまでそれは試運転とPRを兼ねたものです。クロスシートは、9000系等の一部の車両の両端にボックスシートが付いているので全くの初ではありませんが、リクライニングこそしないものの進行方向を向いたクロスシート(ロマンスシート)に、トイレが付いた特急列車に近い車両が、土休日のみとはいえ定期列車として走ります。汚水処理の設備がない東急線単独では走ることが出来ません。
 トイレは、全体の広角写真がないので何とも言えませんが、温水洗浄便座は付いていないようです(あるとしたら、プレスリリースで公表するでしょう)。
 S-TRAINの各車両の両端はロングシート固定のようです。こちらが座席として売られるかは分かりませんが、同じ性格を持つ東武・TJライナーでは販売されないようです。座席として売られない場合、知らずに駆け込んで乗ってしまった人が座れちゃうかも...東急線で、こういう座席に料金を取るタイプの列車は初めてなので、停車駅が少ないこともあり、最初はそういうトラブルは起こってしまうかもしれません。
 1号車の乗務員室寄りには、「パートナーゾーン」という場所があります。ロング/クロス共に一般的な座席がなく、車椅子利用者などが使いやすい広いスペースです。ここをベースに、車内販売の基地に出来ないのだろうか、と一瞬思いました。JR東日本の普通列車グリーン車のように、車掌ではなく客室乗務員が検札(もしくはチェック)を行い、空いたタイミングに車内販売をするのは、余裕がないでしょうか。10両編成でしかも駅間の走行時間も長くはないので、検札をする乗務員は複数人いて、一気に検札をしてもおかしくないですが、一度検札してしまえば時間も空くでしょう。


東横線内(のみの)利用が可能に

 16年の6月にプレスリリースがあった際、デビューするという発表を見ての第一印象は、どうせ、渋谷発(下り)は西武線内乗車→東横線内は降車のみ、元町中華街発(上り)は、東横線内は乗車のみ→西武線内降車という仕組みになるのだろう、と思っていました。みなとみらい線内は確かにそうですが、特筆すべきは、東横線とみなとみらい線内の停車駅(渋谷〜自由が丘〜横浜〜みなとみらい〜元町・中華街)のうち、東横線内のみの利用も可能であるということです。ちなみに、料金表から判断すると、副都心線内は、自由が丘→新宿三丁目や、新宿三丁目→所沢としての利用は可能ですが、渋谷→新宿三丁目のような、副都心線内のみの乗車はできないようです。
 この指定券が購入できる場所ですが、東横線・みなとみらい線各駅の自動券売機、更にS-TRAIN停車駅では、駅窓口と更に「指定券券売機」でも購入できると記載されています。もしかしたら、ホーム上に、券売機が現れるのかもしれません。ただ、指定券券売機は東横線のみで、みなとみらい線には設置されないようで…みなとみらい線って、改札口からホームまで、結構高低差があるんですよね。改札口付近で買うのはアウトでも(最近、券売機も減らされつつあるし)、ホームにあればギリギリ間にあって乗れる可能性はありそうなので、みなとみらい線内のホームにも置いて欲しいです。


武蔵小杉は停車せず

 武蔵小杉から池袋まで、JR線を使えば1本でいけます。しかも、その気になればグリーン車を連結しています。そのためか、S-TRAINは、その武蔵小杉には停まりません。また一方、東海道新幹線利用客の乗り継ぎで使えそうですが、菊名にも停まらないのは少々意外です。菊名駅では、各駅停車が(待ち合わせではなく)通過待ちをすることになるでしょう。
 特急停車駅というくくりで言えば、中目黒にも停まりません。中目黒駅利用の目的(日比谷線への乗換)ならば新宿三丁目などで地下鉄に乗り換えるように誘導したいのでしょうか。
 自由が丘に停めるのは、自由が丘そのものも観光地のような場所と言うこともありますが、埼玉方面からの利用者が、そこから大井町線に乗り換えて、台場方面に向かうことを考慮しているのでしょうか(10両オールロングシートの埼京線対策)。となると今後、「西武横浜ベイサイドきっぷ」のような、西武〜メトロ〜東急〜りんかい線(乗り放題)の、一枚の切符が出てもおかしくありません。


上りと下りの妙

 一般的な運行番号として、下り方面は偶数、上り方面は奇数です。日本国内では、飛行機も列車も共通しており、例えば、日本航空の101便は東京(羽田)発で、東北新幹線のはやぶさ1号(列車番号:3001B)は東京発です。
 実際の乗車には全く関係ないですが、時刻表で表示される列車番号的に、どういう表示をするのかなぁ…というのは、少々気になります。S-TRAINはあくまで西武の列車です。例えば飯能から池袋に向かうS-TRAIN2号は上り列車なので偶数ですが、その偶数の号数のまま副都心線方面に突入し、元町・中華街に行くには下り列車になりますが、号数はもちろんそのままです。一方、列車番号は鉄道会社ごとに変わるので、渋谷を出発したら下り列車=列車番号は奇数となります。ちなみに、S-TRAIN2号に近いダイヤで現在走っている列車の列車番号は054101(奇数)です。
 現在、東横線は、どの列車の編成も、渋谷方面が1号車〜元町中華街方面が8・10号車です。この逆の考えを見ると、池袋方面が1号車ではないかと思ってしまう西武池袋線ですが、今の時点で逆でした。東横線・西武池袋線とも、北方面が1号車となります(昔から)。

(参考)ちちぶ号の編成図
1234567
指定指定指定指定指定指定指定
車椅子・WC    WC
←飯能    池袋→

 054101列車は、今の時点では東急の車両が走っていますが、今後は西武の車両で走るのは明確です。一方でおそらくS-TRAINデビューと同日に、祐天寺駅の待避線も使い始めることでしょうし、この辺りで3月18日以降、いろいろ大変化が起こりそうです。時刻表発売が楽しみです。
 話はずれますが、湘南新宿ラインや上野東京ラインの列車番号の末尾はどうなのかと思いましたが、北方面から見て、上野止まり(全列車)と品川行きの常磐線は偶数、新宿と東京を越える列車(常磐線除く)は奇数です。同じ東京駅でも、横須賀線と総武快速線の直通の場合は、東京駅で末尾の1をプラスマイナスしますが、これは国鉄時代からの流れなので、上り下りを厳密に考えているのでしょう。


TJライナーも来るかな

 ここで気になるのは先輩格である、2008年6月にデビューした、東武東上線を走るTJライナーです。トイレは付いてはいませんが、同じような車両・座席(クロスシートとロングシートが切り替えられる)で、東上線内でクロスシートで運転する際は、座席料金を出して座れるようなシステムです(ただしこちらは指定券ではなく、整理券)。S-TRAINが好評であれば、TJライナーももしかしたら東横線にやってくるかもしれません。S-TRAINとTJライナーが東横線内の何処かですれ違えたら、かなり胸熱です。もちろん東急自身がこのようなタイプの新型車両を導入し、座席指定列車の本数が増えても大歓迎です。
 今後は、クロス・ロングが切り替えられるこれらと同じような車両が、18年春に京王線でも登場する予定です。これにより、相鉄以外の関東の大手私鉄全社で、お金を出せば必ず座席に座れるサービスを提供することになります。クロスシートとロングシートを切り替えられる技術を開発した人に、是非ともお会いし、話を聞いてみたいものです。




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