ホテルグランドパレスの記録

掲載日2021年07月01日
 2021年6月30日、開業して49年、東京都内にある老舗のホテルが閉館した。九段下にあったホテルグランドパレスである。日本武道館は徒歩圏で東京ドームも近い。そこでのイベント帰りに泊まった人も多いかもしれない。新型コロナウィルスの影響で利用者が大幅に減ったようで、最初は一時的に営業休止という発表があったが、2月9日付の発表で営業終了=閉館という内容に変わってしまった。
 都民の自分としては、首都圏のホテルに泊まることはあまりないが、お墓参りの後に食事のためにグランドパレスはよく利用していた。お彼岸は年に2回あるので、利用したのも年に2回ということになる。なぜここなのかというと、墓地から近いと言うこともあるが、亡くなった祖父(家も近い)がよく通っていたとのことだ。
 このページでは、閉館直前のホテルグランドパレスで撮った写真を公開することにした。


 目白通りから見た外観

2020年と、それより前の状況

 このホテルにはレストランが6カ所あるが、いつも使うのは1階にある「カトレア」だった。というのも、ここの名物料理が祖父、そして両親のお気に入りだったからである。また、コロナ禍の前は朝昼晩とブッフェもあり、その名物料理を味見しながらランチブッフェの料理を食べたりした。つまり、ありきたりな言葉を使うと、「親子3代で利用していた」ということになる。
 去年もお墓参りの後にもちろん寄った。細かい話をすると去年4月に亡くなった祖母の納骨もあるので、去年に限っては3回寄った。去年の時点ではまだ、休館の発表も閉館の発表もない。ただ、利用者が少ないことは明確で、駐車場は地下の2階と3階にあり、当然ながら2階の方が先に埋まるものだが、2階もがら空きだったことだ。そしてロビー(地上1階)に出ると人がいない。「カトレア」では一時期、ブッフェがなくなり、メニューも少し絞っていたかもしれない。また、ファミレスにもあるような、サラダや飲み物が付くセットがなくなっていた(これは最後まで)。朝食は普段は「カトレア」と、和食で提供されるようだが、コロナ禍になり、ルームサービスで洋食のみという形式になった。
 ブッフェは週末のランチのみだが、9月のお彼岸までには復活した。
 コロナ禍前は席の予約はブッフェ利用者のみだったが、確か営業終了の発表以降は、席のみの予約も可能になった。


営業休止、からの、営業終了の発表

 プレスリリースによれば、まずは20年12月28日付で営業休止の発表があったが、2ヶ月後の21年2月9日に営業終了と変わってしまった。
 そこで、レストランの利用はもちろんのこと、初めて宿泊してみることにした。また、普段は家族で行っているランチ(ブッフェ)だが、趣味仲間を集めて利用することにした。
 5月の時点では、ホテルのパンフレットがあったが、6月の時点ではなくなっていた。



プレミアム“S”フロア

 このホテルは24階建ての建物で(客の出入りが可能なのは23階まで)、23階はレストラン、22階はスイートルームで、一般の客室としては最上階にあたるのが21階です。他のホテルで言えば「エグゼクティブフロア」的な性格でしょうか(これとは別に『エグゼクティブシングル』という客室もある)。シャンプー類は他のグレードとは違うものが用意されていましたが、ごく一般的なエグゼクティブフロアと違って、専用ラウンジなどはありません。
 そして、これはそう言うものかと思う一方で解せないのは、製氷機がなかったことです。比較的グレードが高いホテルでも、エレベーターの近くに製氷機があり、自由に無料でもらえるようになっていますが、ここはルームサービスかコンビニで買って、と言う話でした。ホテルに泊まるとき、お湯を沸かしてティーパックのほうじ茶を入れて、たっぷりの氷で冷やしたものを飲むことが好きなので、残念です(※グランドパレスではほうじ茶のティーパックはありませんでしたので、氷があったとしても持参したものを使います)。


 エレベーターを降りると、カードキーで開く自動ドアがあります。

スタンダードシングル


 客室です。電源の数は多く、手持ちの二股ソケットは使わずに済みました。浴衣とパジャマがベッドの上にあります。奇をてらわない、落ち着いた色遣いです。



 バスルームです。タオルは3種類あります。掃除は行き届いており快適です。

 5月にシングルに泊まりましたが、このときの眺めは「ヒルサイド」でした。建物的に言えば、このページの一番上の写真が表側だとしたら、裏側です。シングルルームはヒルサイドにしかないようです。

スタンダードダブル

 せっかくなので目の前の目白通りを望む「タウンサイド」側にも泊まってみたいと思い、6月の最後の週末に泊まることにしました。上記の通りシングルでは用意されていないとのことで、ダブルルームのシングルユースです。


 客室です。T字形のテーブルが特徴です。シングルルームのベッドの上には、浴衣とパジャマがありましたが、2人用のこの部屋はロッカーにありました。



 バスルームです。広さはシングルと同じです。



 ロッカーには、消臭剤や荷物台の他、浴衣・パジャマ・バスローブ・使い捨てスリッパ・スリッパと至れり尽くせりです。扉を開くと、ロッカー内の照明が付くようになっています。



 机の上にはこのようなメッセージがありました(5月の時はありませんでした)。



 お土産のタオル(新品)付きの宿泊プランにしました。チェックイン時にフロントでもらいました。



「レストラン&カフェ カトレア」での夕食

 ホテルグランドパレスに行った目的は、近くでイベントがあったとか、そういうわけではなく、宿泊・夕食・ランチブッフェの3つですが、一番の目的はこちら(夕食で名物料理を食べる)です。というのも、この名物料理がなければ、宿泊もランチブッフェも考えなかったでしょう。5月、6月に行ったときのそれぞれの料理を載せます。ちなみに、6月の時は「満席」の立て札が立っていました。宿泊客は10%割引で食べることが出来ました。
 一人で食べたものですが、最後ですので、食べない後悔より食べる後悔です(もちろん、写真だけ撮って残すような、非道なことはしていません)。

<ミックスサラダ(5月)>

 ドレッシングはすでに掛かっています。


<シーザーサラダ 生ハム添え(6月)>

 ベーコンではなく生ハムが添えられています。


<ビーフコンソメスープ(5月)>

 透き通った美しいスープです。おいしいので早く口に入れたい、というのと、味わいたいからゆっくり飲みたい、という両者が拮抗します。


<オニオングラタンスープ(6月)>

 おいしいので早く口に入れたい、というのと、熱くてやけどするからゆっくり口に入れないといけない、という両者が拮抗します。


<伝統の帆立貝柱のピラフ シャトーソース(5,6月)>

 これが、上で書いた「名物料理」です。それ以外のメニューは、5月6月で別々の料理を頼みましたが、この料理だけは2回とも頼んでいます。この下に肉料理を頼んでいますが、性格的に言えばこのピラフの方がメインディッシュのようなものです。周囲を見ると、この帆立のピラフ目当ての人が相当数いました。
 ご飯の堅さが丁度よく、バターのいい香りがします。帆立の貝柱とマッシュルームがゴロゴロ入っています。そして左にあるシャトーソースで味変が出来ます。こちらは、「味わいたい」よりも、「おいしいので早く口にしたい」の圧勝です(そして、もっと味わえばよかった…と後悔します)。
 他の料理ももちろんおいしいのですが、ここでしか食べられないであろうこのメニューが食べられなくなるのは本当に惜しいです。


<ハンバーグステーキ 温野菜添え(5月)>

 いわゆるげんこつハンバーグのように分厚いハンバーグで、ちょっと時間が掛かった覚えがあります。ソースは、わさび醤油、照り焼き、デミグラス、ペッパーの4種類があり、わさび醤油を選びます。


<若鶏のグリル 温野菜添え(6月)>

 こちらも、4種類のソースから選択します(ペッパーソースを選択)。焼き色の網目がきれいに付いています。


<オムライス(5月)>

 デミグラスソースかトマトケチャップかを選択します。いわゆるタンポポオムライスで、ウェイターがオムレツを開いてくれます。チキンライスの鶏肉は大きめで食べ応えがあります。


<きのことベーコンのスパゲティ(6月)>

 塩味ですが、コクがありました。量はちょっと少ないかもしれません。


<ビーフピラフ・クリームソーダ(6月)>

 こちらにもシャトーソースが添えられていました(左奥)。ピラフそのものがおいしいので、具が違ってもやはりおいしいです。フライドガーリックが大変香ばしかったです。
 喫茶店でおなじみのクリームソーダがメニューにあります。所々に残る昭和の一つです。


<オレンジケーキ・紅茶(5月)>

 売店で売っているオレンジケーキですが、レストランで食べることも出来ます。



6月最後の週末の、夜の様子

 深夜23時頃になりのどが渇き、自動販売機が1階にあるというので行ってみると、閉館に向けてなのか、3台ある自販機が使えなくなっていました。といっても、ホテルの敷地を抜けて数歩であるので、困ることはありませんでしたが、ついでに周辺の様子を見てみます。


 さすがにこの時間帯ですので、ロビーは人がいません(フロントの人は呼べば出てくると思います)。でも、上記の去年も、明るい時間帯でもこれに近い惨状でした。



 パンやケーキが売られている売店「ジュリー」は、平日は19時閉店(コロナ前は20時まで)ですが、実はこの写真のちょっと前まで、お店の方が作業をしていました。営業終了前の駆け込み需要の処理でしょう。
 左の立て看板は、普段はパンのメニューなどが書かれていましたが、このときは「ホテルグランドパレスは、 6/30(水)14:00を もちまして営業を 終了することとなりました。 49年間のご愛顧 誠にありがとうございました。☆ホテルグランドパレス スタッフ一同」と書かれていました。

 グランドパレスの売店「ジュリー」を語る上で、ここで売られていた「オレンジケーキ」は欠かせません。
 普段の食事後、カレーパンなどと共に、このオレンジケーキを1切れお土産にしていました。甘すぎず、オレンジの主張が丁度いい逸品です。営業終了が近づくと、このオレンジケーキがバカ売れ。お店の人によると「YAHOO!ニュースに載ったらしい」とのことで、5月の時点でも売り切れていたので、予約して後日行った家族に取りに行って貰ったほどでした。
 ちなみに、パッケージに貼られたシールを見ると、ホテル内で製造したものもありましたが、パレスホテルの岩槻工場で製造の旨の印字が。そして、パレスホテル東京のオンラインショップでは「ケークオランジュ」という名称の商品が。そこには、「リキュールで香りを付けた自家製オレンジピールをたっぷりと使用して焼き上げたパウンドケーキ」という説明があります。同一かどうかは分かりませんが、もしかしたら近いかもしれません。



 夜の外観です。23時半頃なので、就寝している人も多数あるでしょうが…明かりが付いている部屋は少ないように思えます。
 このホテルの敷地には、滝があることが有名ですが、さすがに夜はスイッチが切られ、水は出ていませんでした(暗いので撮っていません)。


6月最後の週末の、午前中の様子

 最後の「オレンジケーキ」を引き取りに、11時開店の売店に11時過ぎに行くと、行列が出来ていました。オレンジケーキ目当ての人が多いようで、それらしい箱がどんどん売れていました(行列の人は、自分を含めて予約した人だと思います)。

 また、その後にランチブッフェで「カトレア」に向かうと、やはり満席の立て札でした。
 6月のランチブッフェは、最後の最後と言うことで、23階のフレンチレストランでしか食べられないという「舌平目のボンファム」が提供されていました。私自身、白身魚料理はあまり好きではないのですが、お魚はふっくら、ソースは濃厚。おいしくて何回かお代わりしました。コロナ感染対策で、利用者を絞っているからか、以前と比べると混雑はしていませんでした。

 ただ、その一方、23時半の明かりから想像出来るように、宿泊客は少なかったと思われます。5月の時も含めて、チェックイン・チェックアウトは並ばずに行えました。まぁ、売店に向かう際に使ったエレベーターは、少しだけ待ちましたが…(逆を言えば、他の時間帯・さらには他のホテルでは、去年くらいから、エレベーターがすぐにやってきます...3台のうち1台は使っていないホテルもありました)。



まとめというか感想というか

 実は…なのだろうが、スタッフによっては、応対がちょっとぶっきらぼうな人もいたのは確かだ。ただしそれは、外資系のホテルの(場合によっては不自然にも映る)フレンドリーさと比べれば…なのかもしれない。

 リニューアルしたとは言え、所々に昭和の面影が残っていた。新しいホテルと比べると低いロビー階の天井、客室ベッドのサイドテーブル、宴会フロアの案内の看板などの書体…しかしこれらが、なんだか居心地がよかった。
 ランチブッフェに来て貰った趣味仲間は、“リニューアルしてこんなにきれいだとは思わなかった”と話していた。また、来て貰った仲間には帆立のピラフを宣伝したが、後日持ち帰ったり食べに行った方もいらっしゃり、概ね好評だった。このページでも、結果として食べ物の写真が多くを占めたが、料理を重視していたホテルだったからではないかと思う。
 リニューアルして中はきれいとはいえ、建物そのものの老朽化はあるのかもしれない。地下の駐車場に進むカーブは結構窮屈で、こすった跡も見た(気がする)。ただ、首都高の出入口やJR・東京メトロ・都営地下鉄の駅から近く、地の利は圧倒的によい。もし、この場でホテルが再開出来たとしても、建て直して今風の建物になり、低層階はオフィス、高層階のみホテルという構造になってしまうのだろうか。それでも、もし、そのホテルで帆立のピラフが食べられるレストランを構えてくれたら、年に一回は宿泊しようと思う。

 このホテルを表す一番のキーワードは「伝統」だと思う。「伝統の○○」という言葉がよく使われていた。古いという意味にもとらえられるかもしれないが、古いから悪いわけではない。この利便性の高い場所で、何らかの形で再開し、「伝説」になってしまわないことを切に願う。





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