「おれんじ食堂」に乗ってきました

 「おれんじ食堂」とは、西九州を、食事しながら移動する、クルーズトレインです。テーマは「食とスローライフを満喫する九州西海岸の旅」。
 元々この列車の走る路線(川内〜八代間)は「鹿児島本線」というJR九州の路線の一部でしたが、2004年3月に九州新幹線が一部開業すると共に、第三セクターによる「肥薩おれんじ鉄道」として開業。第三セクターの鉄道会社は概ね、経営的に順調な会社は多くないものですが、この会社も同じ境遇となってしまいます。
 そんな中、列車からの風光明媚な景色や鹿児島ならではの食材などの観光資源を有効活用すべく、この「おれんじ食堂」は、2013年3月にデビューしました。この列車のデザイナーは、JR九州などのデザイン顧問でもおなじみ、水戸岡鋭治氏です。
 昼食帯を走る1号は新八代→川内、午後から夕方の頃に走る2号は川内→新八代、夕食帯を走る3号は新八代→川内(出水止まりの日もあり)の区間を走ります。2014年3月中旬までの場合です。それ以降は新たなダイヤ、メニューや値段なども大きく異なるようです。

車両紹介




1号車

 1号車は「ダイニング・カー」です。原則として全区間乗車、料理込みの旅行商品として発売されます。定員は23名です。


 水戸岡さんらしい、明るい木目の車内です。左側(カウンター側)が、海沿いとなります。



 上の写真の反対側から撮影したものです。水戸岡テイストがあふれていながらも、1号車を冷静に見ると、海側のカウンター席や、ボックス席の通路側は、レストランでも見かけそうなの椅子ではあるものの、両側には荷棚があり、山側の座席はロングシートの、一般的な列車です。



 キッチンです。料理は提携のレストランより調理されているので、形態としてはキッチンと言うより飛行機のギャレーに近いです。キッチンにはもちろん、水栓があります。



 キッチンの向かいには銘酒の瓶がディスプレイされています。



 床を嵩上げし、外を向いた小さな椅子が2脚置かれている子供展望席です。2号車にもあります。手前は、乗車記念撮影にも使えるウェルカムボードです。
 法律的な都合なのでしょうか、左には、使われることのない精算機が設置されています。


2号車

 2号車は「リビング・カー」です。乗車区間の運賃+座席指定料金という価格設定となり、区間乗車も可能で、しかも料理はオプションとして追加が可能です。2号車には、トイレと、コーヒーの置いてあるドリンクカウンターがありますが、1号車と2号車の間は基本的には業務スペースとなり、トイレにでも行かない限り、1号車の客は2号車に行くことはありません(コーヒーは係の人に持ってきてもらえます)。定員は20名です。


 この写真も、左側が海沿いとなります。海側は、食堂車と同じような向きにテーブルが並べられています。



 この写真の左側は、1号車と同じような配置のロングシート+両端に壁があります。



 トイレは2号車にあります。トイレの中は、至って普通の気動車用の真空式洋式トイレですが、壁には水戸岡氏のイラストがあります。紙巻器は、2連紙巻器ではないものの、オレンジ色の、家庭用のホルダーが用意され、縦2連になっています。トイレットペーパーは花柄でした。シートペーパーは、ホルダーはありましたが、中身はありませんでした。手洗いの水栓もこのタイプのトイレに使われているものと同じものでしたが、ボウルを含めて、レストランらしい、もうちょっと大きくあってほしいものです。


 車内の構造的なものも含めて、1号車の方が広々した感がありますが、全席満席だと、壁のある2号車の構造の方がいいのかもしれません。


サービス紹介

乗車日:2013年12月の下旬・おれんじ食堂2号・1号車 2014年3月中旬までの内容です。それ以降は新たなダイヤ、メニューや値段なども大きく異なるようです。
 上記の通り、1号車乗車の場合、原則は全区間乗車ですが、帰宅の飛行機の都合上、途中で降りて、新幹線に乗らないといけなくなりました(これらの情報で、おれんじ食堂のスタッフから、誰がこの文章を掲載したかがばれてしまいますが…)。金額は、全区間乗車と同じです。そのため、一般的な乗車とは一部異なります。
 また、時期により、献立、お土産の内容は変わります。

 川内駅の肥薩おれんじ鉄道の乗り場は、ホームの端にあります。JRとおれんじ鉄道との境には事務所があり、おれんじ鉄道の係りの人がいる他、待合室としても機能しています。

 定刻通り13時33分に、折り返し列車(1号)が入線。1号の乗客は「ごちそうさまでした」などと言いながらJR方面へ、駅の人も非常に丁寧に一人一人に「ありがとうございました」と送り出します。乗客の顔つきを見ると、満足した人が多く、期待できます。案内によれば、掃除してから、13時55分頃から車内に入れるとのこと。床もモップで清掃し、かなり念入りに行われていました。



 車内に入れるようになると、テーブルにはお箸やミネラルウォーターがセッティングされていました(2号車も)。全席にセッティングされているわけではなく、予約に応じてなので、この時点で、どこに人が座る=混雑具合がわかります。ちなみに、1号車の利用者はほとんどが一人利用だったので、一人で利用することを気にすることはありません。
 出発前に送られてきたバウチャー券には座席番号が記載されており、車内にも座席番号があるので分からなくはありませんが、車内に入ると、担当の人が名前を聞いてリストを見て、予約したレストランと同じく、席が案内されます。混んでいないときは基本的に、海側が見えるようにアサインしている印象です。
 車内はクリスマス系のBGMが流れていましたた。乗務員は、運転士の他、4名ほどの模様。

 出発すると温かいおしぼりが配られます。そして料理はもちろん、食器で出てきます。「おれんじ食堂」という名だけあり、これを普通と思えてしまうのだから恐ろしいものです。いい意味で違和感を感じません。逆に、使い捨て容器だったら大きく冷めてしまうでしょう。


特製オードブルバスケット

(左上から)薩摩八重ファーム産黒豚のカツサンド・茶碗蒸し・冬野菜のサラダ 3種のソースを添えて
オードブル六品盛り(黒豚ボロニアソーセージとオレンジ・ミニトマトの生ハム巻き・ほうれん草とベーコンのキッシュ・入来町産アイスプラント・甑島産たか海老の唐揚げ・マカロンとキャビア)
 まずは前菜。野菜が美味です。茶碗蒸しはほんのり温かさが残っていました。3種のソースは、ミネラルウォーター右の練り梅・柚子塩・ドレッシングです。


季節のスープ

 次にスープ。コンソメスープにかりかりのベーコンが載っています。



 途中で飲み物のオーダーがきます(画像クリックで、テキスト化したメニューを表示します)。精算はその都度(持ってきたときに)行われます。

フレッシュジュース

 サービスの柑橘系のジュースは、係りの人へのリクエストで持ってきてもらえ、積極的に、いかがですか、という感じではありません。飲み物のオーダーを頼まない人には勧めている印象があります。飲むと、本当のフレッシュジュース、口一杯に自然の柑橘系の香りが広がります。無尽蔵にあるわけではなく、数量限定(早いものがち)が現実です。また一杯の量は少ないものの、その分ありがたみが増すようにも思えました。


メインディッシュ

黒豚のローストポーク 赤ワインソースで バケット添え
 メインディッシュは、コールドディッシュでも豚肉は柔らかく食べやすいです。ただし、豚特有の臭みが少々あったのが残念でした。ご飯ものは写真のバゲットのみです。
 お箸の落下音がしたら、お箸を持ってすぐに近くに向かうなど、スタッフの方はかなり気を遣っているようです。


デザート

 デザートは、ミルクシャーベットもあります。



 コーヒーと茶菓子は係の人に頼むと持ってきてもらえます。



 停車の所々で、このようなお土産がもらえます(3箇所でそれぞれもらえたお土産をまとめて撮影したものです)。左上から時計回りに、阿久根名産の『ぼんたん漬け』、『いずみどりの熟成柿酢仕立』、水俣のみかん『スイートスプリング』、紙袋も用意されます。
 この列車をモチーフにした乗車記念のお土産は、4種類(グラス、ノート、入場券、ポストカード)でしたが、今後、種類が増えるかもしれないとのことです。

 新水俣で降りたものの、食事そのものは、この区間まで乗れれば、一通り楽しめます。1号車を担当していただいた男性のスタッフからお見送りを受け、降車しましたが、ここまで気を遣うローカル線は初めてです。
 普通に乗っていれば2〜3000円もしないところを、1万数千円を掛けるわけで、それなりのサービスを受けるべきなのは当然ですが、それ以上に温もりがあって気持ちがよく、さすが水戸岡プロデュースです。


 要望としては、「食堂」と名乗っているわけで、アラカルト料理も用意できればと思います。1号車の乗客で物足りない人はもちろん、料理を予約していない2号車の乗客で何か食べたくなった人が対象です。スーパービュー踊り子グリーン車でおなじみのカレーライスは臭いが強いかもしれませんが、国内線JALファーストクラスで一時期出てきた、パスタなどの軽食を想定しています。これらは常温で保存でき、電子レンジで調理ができます。電子レンジは、逆におれんじ食堂に搭載していないようにも見えましたが、搭載することで熱燗などのメニューも用意できます。スペース的に設置は疑問かもしれませんが、とことんブラッシュアップして欲しいものです。





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