有給休暇を使っていく小旅行-2・川原湯温泉

 有給休暇とは、学生時代の夏休みのように長くはありませんが、リフレッシュできるいい機会です。会社によっては、労働組合の都合もあり、用事がなくても有給休暇を取らねばならない会社もあるようですが、ただ家にいるだけでは面白くありません。こう言うときこそ、普段は混雑しているところにいくのがよいでしょう。第2回目は、群馬県吾妻郡 川原湯温泉に向かいました。
 取材日:2006年07月下旬の、平日
文中にある「王湯」は、2014年06月30日に閉鎖したとのことです。本当に幻となってしまいました。


 川原湯温泉は、「幻の温泉」と言われる温泉地です。このサイトでは、期間限定で掲載します。
 JR吾妻線・川原湯温泉駅を出て右に出ると、このような看板が見えます。栄えているか寂れているかと言われると、正直、後者と思う方が多いと思います。メインコンテンツの座席紹介は、悪い座席も紹介しています。だからといって、このページまでそれが波及されても困るかもしれません。
 しかし、それには理由があります。この場所は、まもなく、八ツ場ダムの建設により、数年後には、温泉街ごとダムの底に沈んでしまうためです。おそらく渇水にでもならない限り、お目に掛かることさえもできないでしょう。そのため、新しい設備投資をしても仕方ありませんから、本当に「期間限定」「幻」になってしまう温泉というわけです。駅もなくなってしまうとのことです(線路ごと移設するとのことです)。
 特急列車も止まるこの駅前にはコンビニすらなく、ひっそりとしています。



 後はしばらく上り/下り坂が続きます。平日と言うこともあって、誰も人(客はもちろん)がいません。また、もしかして移転も終わって、後はダムになるのを待っているだけか、と疑ってしまうくらい、しばらくは何もありません(この写真のおみやげ屋さんが唯一見えます)。他には、時々、美容室が見えるだけです。また、ダムに沈むと言うわけで、すでに廃業している旅館もありました。写真のお土産屋「お福」は、おみやげを買うと、電車の中で食べてと、箱を開封してあるお菓子をいただきました。
 また少し歩くと、飲食店「旬」があります。外からお店を見て想像するよりメニューが豊富で、14時過ぎでも営業していました。
 川原湯温泉のパンフレットに「自然以外は何にもない」とありましたが、本当に何もありません。温泉地と言うよりも、田舎の山に来た感じです。



 しばらく(徒歩10〜15分)山道を歩くと、ようやく、共同浴場や神社、足湯+温泉卵がゆでられる場所がある、温泉街に着きます。中心地的な場所です。ここ付近の旅館は営業しています。足湯は、どうやらダム建設に当たって、川原湯温泉再建の願いのために造ったようです。奥の階段を上ると、神社があります。神社は多少新しいようで、まだ木の香りがしました。
 所々で、硫黄のにおいがします。温泉地に来たことを実感できます。



 温泉街から少し離れたところですが、すでに田舎の道ですね。左手の建物は、「豊田乳業」という牛乳屋さんです。直売もしています。難点と言えば、この後紹介する浴場から、少し歩くこと。お風呂の後に牛乳を飲みたいところですが、歩く間にまた汗をかいてしまいそうな距離です。以前はその浴場でもここの牛乳を売っていたようなのですが、現在、売られていないので、ここまで行かなければなりません。



 温泉街の真ん中には、「王湯」という、共同浴場があります。川原湯温泉の元湯です。



 まずは内湯です。古い施設で見かける、あくまで、「昔の温泉場」です。脱衣所にはロッカーではなく、普通の木の棚。洗い場は、2ハンドル混合水栓が一つあるだけで、体を洗うには湯船のお湯を使うのが一般的。おそらく、地元の人は気にせずに使っているのでしょう。この写真のように誰もいないときは特に問題はありませんが、人がたくさんいると汚れが気になるかもしれません(ちなみにお湯が出る元は熱く、使うどころではありません)。



 露天風呂は、おそらく、増築したもののようで、内湯との移動には、いったん服を着て移動しなければなりません。本格的に入りたい場合は、浴衣を持っていくと良さそうです。洗い場の類はありません。晴れていると木漏れ日が心地よく、聞こえてくるのは、小鳥や虫の鳴き声、滝の音、時々遠くで走る電車の音だけです。都心にも温泉施設はあり、設備面では充実していますが、この心地よさは、都心では味わうことはできません。
 湯船には、温泉はもちろんですが(写真左方)、必ず水が最大にひねって出ています。どうやら源泉は80℃あるようです。確かに熱く、湯船の縁に腰掛けていても、汗がじっとりと出てくるほどです。その後、湯船からでてもしばらく、しっとりと汗が出ます。「温泉に入った」と実感できるお湯でした。


お風呂データ
入場料300円
付属品(なし)
石けん(なし)
浴槽の種類内湯×1・露天風呂×1(それぞれ、通路経由)
泉質含硫黄−塩化物・硫酸塩温泉
洗い場1箇所・2ハンドル(内湯)
その他休憩場は別途300円
小タオルは、近くの売店でも発売しています。
トイレは、見た限り全室が和式です。



 そして休憩室です。いわゆる大広間ですが、追加料金が必要です(この休憩室を使わなくても、所々、イスは若干置いてあります)。雰囲気や、建物のにおいなど、温泉施設と言うよりも田舎の親戚の家に行ったかのようです。風呂から上がると、お茶の用意がしてありました。もちろん氷水をもらうこともできます。ここは4時間までいられます。


 さて、川原湯温泉のこの先、2〜3年で、今の場所はダムに埋まってしまう一方、温泉地そのものは別の場所に移るとのこと。しかし、もちろん、古い建物は復元することはないでしょうし、やはり、人口が減少していっているとのことです。移転後に行ったとき、活性化しているかどうか、気になるところです。

 人間の手では再現することの出来ない、大自然と良質な泉質に囲まれたこの場所が、人工的なダム建設によって没してしまうのは、非常にもったいないです。
 「幻」というと響きはいいものの、本当に幻にはなってよいのでしょうか。
文中にある「王湯」は、2014年06月30日に閉鎖したとのことです。本当に幻となってしまいました。


川原湯温泉への行き方
 JR吾妻線→川原湯温泉駅→徒歩10分(坂道があります)





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